PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

蠱惑的な、一瞬

関連キャラクター:アレン・ローゼンバーグ

君に捧ぐ
「ただいま姉さん」
 軽やかな足取りで家に帰りつくと、アレンは真っ先に彼女のいる場所へ足を向けた。
 いつも家にいる姉の為に何か面白い話はないかと、アレンは外へ向かうのだ。
「今日は植物園へ行ってきたんだ」
 初夏に咲く花がテーマの展示会が開催されており、一番の目玉として様々な品種の薔薇が各地より集められ咲き乱れていたのだ。
「ああ……とても綺麗だった。姉さんにも見せたかったよ」
 微笑む姉にアレンは心の底から悲しく思う。
 周囲の人々はいつだって彼女に対して冷たい――だから彼女にはいつもこの家で留守番をしてもらうしかないのだ。
 赤や白、黄色にピンク……色とりどりの花に囲まれる彼女の姿はきっと誰よりも美しいはずだ。
 脳裏に思い描く姉の姿。美しい銀髪に薔薇を飾ればきっと映えるだろう。
「そうだ、姉さんごめんね。手を借りるよ」
 ふと思いつきアレンはそっと硝子越しに彼女の手を取り、その甲に唇を落とした。
 途端、そこから美しい青と赤の薔薇の花が咲く。
 其れこそが世界からアレンに与えられた祝福だ。
「とても綺麗だよ」
 双子である彼らの瞳そっくりの色を見てアレンは微笑む。
 僅かばかりの時間ではあるけれど、せめてこの薔薇でリリアの心が癒やされ慰めになることを願いながら。
執筆:いつき

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