PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

気の抜けない同居人

関連キャラクター:スティーブン・スロウ

野良猫にチーズを
 スティーブンは奴隷市で保護した同居人ティオにちょっかいを出しては警戒されている。

「ティオ、今日は何食べたい?」

 スティーブンが声をかけても、ティオは人に懐かない野良猫のように素早く彼から距離を取ってしまう。

「ぼくに構うな。食べたい物があれば自分で作って食べる」

 鋭い口調で拒絶するティオに、スティーブンは肩をすくめた。

「ああ、そうかい。じゃあ、俺も勝手に晩酌させてもらうぜ」

 彼は瓶ビールを取り出して、グビグビと飲み始める。
 ティオは「また酒か」と言いたげな目でスティーブンを観察していた。
 その視線は少なくとも温かなものではない。

「お前も一緒に飲むか?」

 スティーブンが酒の瓶を振ると、ティオは首を横に振った。

「ぼくはお酒は飲まない」

「あっそう。じゃあ、つまみだけでもどうだ?」

 酒が飲めなくてもつまみは美味しいだろう、とスティーブンは燻製のチーズを取り出す。
 それを見た途端、きゅう、と腹が鳴る音がした。
 ティオの方を見やれば、性別不明の彼もしくは彼女はお腹を押さえて羞恥で顔を赤らめていた。

「やっぱ、腹減ってんじゃねえか」

「うるさい」

 スティーブンは、ティオがチーズに興味を示したらしいことを何故か自分のことのように喜んでいた。
 そうして、チーズを小さく切ってティオに差し出す。

「……毒でも入ってないだろうな」

「疑り深いな。これで証明できるだろ?」

 スティーブンは切ったチーズの一欠片を目の前で食べてみせて、「な?」と安心させようとする。
 それを見て、ティオはやっとチーズを慎重に口に入れた。

「燻製だから香ばしくて美味いだろ?」

「……フン。これでぼくに恩を売ったと思うなよ」

「とことんひねくれてるな」

 スティーブンは呆れたような、それでいてホッとしたような笑顔を浮かべるのであった。
 もしかしたら時間はかかるかもしれないが、二人の距離は縮まる日が来るのかもしれない。
 ……亀の歩みよりも遅いかもしれないが。

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