幕間
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豊穣草子
豊穣草子
関連キャラクター:トキノエ
- 桜花雪月残
- 豊穣のごく限られた地域。時。場所。全ての条件を満たされた時にのみ現れるという季節残。
それは春の息吹を迎え入れてくれる、暖かで華やかな色どりをした桜の花びらの舞う姿の様で。
それは冬の終わりを告げる刹那、残灯の様に雪が散る、木漏れ日に照らし出された精霊の様で。
桜でも、花でも、雪でも、月でも、無い。誰もが見た事が無いと、噂される厳かなその御姿は。
神々しい光りに輝く月の女神「天照-アルテミス-」に愛されし一本の大きな樹木であるという。
その樹に巡り合い。一目でもその己が眼で見る事が叶うならば。
血を吐き、起き上がる事も難しい病でも。
恐ろしき、呪いに脅かされてしまった心でも。
どのような病であっても一度治ってしまうという曰くがついていた。
イツからその樹が其処にあったかは定かではない。
ナニせ誰もが見た事が無いと評される樹なのだから。信憑性もない。
アルのはただの噂話。在るか無いか真偽も確かめ難し都市伝説的語り草。
だがそれでも。いつになるかはわからないが。その与太話を信じ、樹を追い求め探し続ける人もいる事だけは確か。
叶わない願い程、縋りつき、わずかな可能性という名の決して「救いの目の出ない」サイコロを振り続けるのも良いだろう。
「桜花雪月残」その樹にはそれだけ……人々の心に引っかかる何かが存在するのだ - 執筆:アル†カナ