幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
潮騒商館
潮騒商館
関連キャラクター:ラダ・ジグリ
- 貴女の留守は私が支えるからね
- 「……んーー……はぁ。今日はここまでかしら。」
積み上げられた帳簿の山を見やりながら大きく伸びをする。レンド・バラーズは今日も一人、まだ新しさを感じさせる商館で書類整理に追われていた。外を見れば月は高く、ずいぶんと夜も更けていたようだ。
「今頃、うちの妹分はどこにいるんだか。」
販路を広げるという目的があるのは分かるけれど、どうにもあの商会主は行く先々で面倒事に巻き込まれてくる。もう成人したんだし、もう少し落ち着いてもいいと思うんだけれど。
ハァ、と息を吐きながら、すっかり冷めてしまったフレーバーティーに口をつける。
――苦くない奴がいい。
私も同じだけど、それにしてもあの子、大人っぽく見えてあれで可愛いところがあるのよね。おもわず昔の話を思い出して、フフッっと笑みがこぼれる。
「……ラダが14の頃だったっけ。お互い、大人になったなぁ。まだまだ本家から見たら駆け出しだけど。」
――人を殺してしまったらしい。
あの日、表情を変えることなくそう呟いた彼女の気持ちに、レンドは想像はできても、共感してあげることはできなかった。でも、最近の彼女はどうだろう。
「自然に笑うようになったよね。でも、お姉さんは嬉しいけど、ちょっぴり心配だぞ。」
変な男にひっかからないといいけど。
今度帰ってきたら、お酒と一緒に聞いてみようかしら? - 執筆:ユキ