PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

潮騒商館

関連キャラクター:ラダ・ジグリ

嵐の夜に。或いは、甘露なる酒を求めて…。
●来る紅
 ごうごうと、窓の外で黒い風が吹き荒れる。
 天候は雨。
 嵐の夜。
「……来たか」
 遠くの丘に、黄色い光。
 ひっそりと、それは嵐に紛れて近づいて来る。
 手にしたライフルに、ゴム弾頭を装填しラダ・ジグリは席を立つ。
 防水コートを身に纏い、ラダ・ジグリは窓を開け放ち外へ。
 嵐の中へ、身を躍らせた。
「やはり来たか……ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ。今日はうちの領地で酒宴か? 酒を仕入れに来たのだろうが」
 溜まったツケを払い終えるまで、空き瓶の1つも渡すわけにはいかないのだ。
「……そう。貴女が立ちはだかりますのね、ラダ」
 雨合羽を脱ぎ捨て、カンテラを捨てる。
 紅い髪の小柄な女。
 鋼の右手にメイスを下げて、暴風雨の中、彼女は告げた。
「ローレットの仲間だ。少々の融通はしてやりたいが……私は商人なのでな」
 商人にとって、金は命と同じ程度には重い。
 ツケを溜めたヴァレーリヤが、酒宴用の酒を狙うというのなら黙って見過ごすわけにはいかないのであった。
「偽名まで使って酒の予約とは恐れ入る」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
 皮肉も通じない。
 ヴァレーリヤは腰の高さにメイスを構えた。
 これ以上の会話は不要ということか。
「気絶させるだけですので……ごめんなさい」
「それはこちらの台詞だよ」
 遠くの空で雷が光る。
 それが開戦の合図であった。
執筆:病み月

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