PandoraPartyProject

幕間

ぽやぽや鉄帝びより

関連キャラクター:セス・サーム

鉄帝国のむずかしい遊び
「こんなの無理じゃねぇか!」
「残念だったねぇ」
 街中でそんなやり取りを耳にし、セスは露店を覗き込んだ。
 頭を抱える屈強な男――彼の前には、粉々に砕けたプレートらしき物が放置されている。
「兄ちゃんも遊んでいくかぃ?」
「見たところ遊戯の様ですが、何という物なのでしょうか?」
 問うと老婆はニヤリと笑った。
「型抜き、だよ」

 彼女いわく豊穣から取り寄せた"遊べる菓子"らしいのだが、『とりあえず力で何とかする』のが鉄帝流。
 大抵の挑戦者はチクチクしている途中で細かな作業が嫌になり、力任せに楊枝を押し込んで、型を大破させてしまうのだ。

「こうでしょうか」
 おぉっと歓声があがる。
 その日、綺麗にひよこを抜いたセスは、屈強な男にコツを教える型抜き教師になったとか。
執筆:芳董
ポーカーフェイス
 情報収集のために訪れた酒場。騒がしく男たちが酒を飲んでいるのかと思いきや、トランプを持って首を捻っている。

「これはどうしたのですか」

 セスが主人に尋ねると、彼は肩を竦めた。

 曰く。ポーカーが流行りだしたはいいが、集まるのは血気盛んな男たちばかりで、緻密な心理戦など長く続かない。そうしていつの間にか、如何にゲーム中に無表情を保ち続けるかという遊びにすりかわってしまったという。

 主人に勧められるまま、同伴の寿馨と席に着く。差し出されたトランプに、寿馨と顔を見合わせた。

「無表情のままゲームを進めれば良いのですね?」

 まあそんなもんさ。からりと笑う店主。


 薄い表情のままゲームを進めるセスと、一生懸命無表情を作る寿馨の姿が、しばらくの間そこにあったという。
鉄帝国の魔法の呪文
 依頼主の好意からセス達一行は酒場へ招待された。飲食代――もちろん酒も含めて――依頼主負担ということで一行は大盛り上がり。セスは食事というものにとんと縁はないが、知人達が楽しそうにしているのに興味を持って席についたのだ。
 食事を通じて縁を深める習慣は中々興味深い。
 そんな彼の前には揚げたポテトにじっくり煮込んだ肉のシチュー、パンにジュースに酒、酒、酒。
「かんぱーい!」
 とは誰の言葉だったか。

 歓談の時は瞬く間に過ぎ皿の上が粗方綺麗になった頃、
「今日は無礼講だ!」
 少し離れた席からそんな声と共に遅れて歓声が届く。
 ジョッキやグラスがぶつかる音がして、セスは不思議そうに傍らのアーリアに問うてみた。
「あれは何ですか?」
「お酒が美味しくなる魔法の呪文よぉ」
執筆:いつき
●●●●を探せ!
●ロマンを求める者
 何やら街がソワソワとした空気に包まれている。旅人を中心に何やら盛り上がっているようだ。

「ツチノコだよ、ツチノコ!」
「ツチノコ……とは?」

 セスが軽く情報収集すると、何か知る様子の青年は興奮気味に話してくれた。

「なるほど、非常に珍しい蛇……と」
「そうなんだよ! 捕まえた奴には高額な賞金が出るんだぜ!」
「それは凄い。誰が出してくれるのですか?」
「そりゃあもちろん!……誰が出すんだ?」

 ……どうも噂には尾鰭が付いているようだった。
執筆:和了
温泉に併設されし密室空間の謎に迫る
●整う
 肉体・精神を同時に癒せる機能的施設として人気の温泉調査中。其処で浴槽とは別に扉で隔てられた密室に気付き入場してみた。中は蒸し暑く、簀子が数段並び、壁には熱源と思われる石の入った炉が設置されている。先客は腕を組みじっと座すのみ。

「暑いですね」
 相変わらず無表情のセスだが、熱によるコアダメージがやや心配なところ。
「サウナ、だってさ」
 応える寿馨は漂う独特の香りが気になった。手で仰いでも熱波と香りしか来ない。そんな二人に先客はチラと目をやって。
「お前達、サウナは初めてか?」
「ええ」
「ほう、では俺が整え方を教えてやろう!」

 サウナーを名乗る先客に促されるまま教わり、蒸され冷やされ乾かされた二人。
 温泉施設を出る頃には心なしか意識が冴えていたとか。
刻廻る
 カチ、コチ、カチ、コチ。
「おや、時計ですか?」
 店頭に並ぶ、規則正しく時を刻むそれを見ていた時だ。リュカシスが後ろからにょっきりと現れて、にぱっと人懐こい笑みを見せる。
「これはツァンラート出身の職人さんが作ったものデスネ!」
「ツァンラート?」
 はい! と頷くリュカシス。時計の街、ツァンラートで技術を学んだ優れた技師たちは、鉄帝のみならず各国でその腕をふるうのだ。
 そこらの粗悪品と異なり、長く正しく時を刻むツァンラート技師の時計は様々な場所で人に愛されている。セスの見つめていた置時計も、どこかで人々の大切な時間を刻み、教えてくれるのだろう。
「興味がおありであれば、一度行ってみるのがよろしいかと」
 百聞は一見に如かずですよとリュカシスは微笑んだ。
執筆:

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