PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

幻想種グルメ

関連キャラクター:ドラマ・ゲツク

黄金比率のグリルチキン&ハンバーグプレート
 此の様な物が好き、と識ったら彼の人は笑うだろうか。
 メニューをじっくり端から端迄。指で辿り行き着いた先は子供が好んで頼むのであろうプレート料理。『食べ応え有り!』と踊る文字に、逡巡。
 否、自分は大層な肉食系な癖に。其れにもう私は立派な大人のレディですし。唯今日は一寸、いやかなりお肉が食べたい口なだけで。
 けれど嗚呼、悔しいかな。まざまざと――鮮明に――男の揶揄う聲と笑い貌が思い浮かんで、而も其れが心を掴んで止まないのだから腹立たしい。
 檸檬を絞ってあるのだろうか、仄かに苦くそして爽やかなお冷を飲み干してカラカラの喉を潤せば、気の効く店員が御代わりを注ぎに来た。明らんだ頬と耳を悟られない様に言葉少なに注文を伝えて、溜息。厨房から飛ばされた威勢の良い謝辞の言葉を聴くのもそこそこに、意識は亦、先程の議題へと移り行く。
 ぼんやりと眸を遣った先、硝子を隔てて紫陽花が咲いていた。六月とは幸福な月だと思い出せば、尚の事意気地なくて不甲斐ない気分になるのだ。
 そんなドラマの憂いを吹き飛ばすかの様に鼻腔を擽るのはじゅうじゅうと肉の焼ける馨り。『お召し物が汚れない様に』と差し出された紙ナプキンを広げると、卓子に熱気を孕んだプレートが置かれ、付け合わせのサラダと冷たいパンプキンスープがサービスだと添えられた。
「今日は雨でお客さまが少ないから。其れに何か思い悩んでいたでしょう?」
 こりゃ参った、と耳を下げる彼女に店員は『ごゆっくり』とカートを押して去り行って。
 脂の跳ねが少なって来た頃合いに、ちらり。皮目をパリパリに焼いたチキンに、挽き肉の配合に拘っているらしきハンバーグ。厚切りのベーコンにソーセージまで!
「ふおー……!」
 少しずつ切り分けては、舌鼓を打つ。戀する乙女には必要なカロリーで軀が漲る感覚。
 私だって存外肉食なんですよ。だから覚悟して下さいね。
執筆:しらね葵

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