幕間
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ホストクラブ『シャーマナイト』
ホストクラブ『シャーマナイト』
関連キャラクター:鵜来巣 冥夜
- 『シャーマナイト』の遅い朝。或いは、酒は飲めども…。
- ●AM11:23
再現性歌舞伎町1980街。
ホストクラブ『シャーマナイト』の朝は遅い。
明かりの消えた店内に、昼の日差しが差し込むころに決まって誰かが苦しそうな呻き声を漏らすのだ。
のそり、と。
並んだソファーとテーブルの間で、スーツを纏った男がゆっくり身を起こす。
顔色は青白く、目の下には濃い隈が張り付いていた。
「……あ”ぁ”」
頭を押さえて、男が呻く。
歳の頃は20を少し過ぎた程度か。
金に染めた髪はすっかりボサボサで、喉から漏れる声は酒に焼けている。
「なん……っ、あ、頭いてぇ」
目を覚ますなり、強烈な頭痛が彼を襲った。
割れるように頭が痛い。
喉の奥から、胃液の匂いが逆流し、思わず数回、体を震わす。
「まったく……無茶な飲み方を」
男の目の前に置かれたのは、水の入ったペットボトルだ。
ペットボトルを差し出した男の名前は鵜来巣 冥夜。『シャーマナイト』のオーナーである。
「っ……っぉ」
「脱水ですかね……ったく、まずは水でも飲んだらどうです?」
ペットボトルを取り上げて、男の額に押し付ける。
キンキンに冷えたペットボトルが、火照った肌に心地いい。
男……『シャーマナイト』の新人ホストである彼は、軽く会釈し冥夜の手からペットボトルを受け取った。
蓋を開けて、まずはひと口、冷たい水を口に含んだ。
ほんのりと檸檬の香りが付いた水である。水分を失った体が、急速に潤いを取り戻していく感覚がなんとも気持ちいい。
1本分の水を一気に飲み干して、男は深く息を吐く。
それから、視線を上げて冥夜へ向かって頭を下げた。
「ざっす、オーナー。いや、生き返る思いってのは、こういうのを言うんですね」
「キミ以外は誰もくたばっちゃいないけどな」
呆れたように溜め息を零して、冥夜は男へ濡れ雑巾を投げつけた。
「? これは?」
「掃除ですよ、掃除。昼まで寝床を貸してやったんだから、せめて掃除ぐらいしていきなさい」
「っす。お疲れ様っす。あの、掃除終わりましたけど」
小一時間ほど時間が過ぎて、新人ホストがそう言った。
書類から顔を上げて、冥夜は時計を見やる。時刻は12時30分を過ぎた頃。
「ご苦労様。まぁ、あれだ……奢りますよ」
付いてこい、と。
新人ホストを引き連れて、冥夜は街へ繰り出した。 - 執筆:病み月