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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

セララの幕間

関連キャラクター:セララ

ドーナツ屋訪問記・傭兵編
 ラサ。
 そう言われて想像するものと言えば。
 砂漠、赤犬の群れをはじめとする傭兵団。そして商人。
 商人がいるという事は当然お店がある。
 そのお店は多岐にわたるが、中にはドーナツ屋もある。
 ただひとつ、気になるのが幻のドーナツ屋があるというのだ。
 問題はその見つけにくさにある。
 実際に行った事がある者が少なすぎて、噂が噂を呼び尾ひれはひれが付きまくっている。
 この噂自体が実は盗賊団が獲物をおびき出すための罠である、とか。
 この店の主が死んだ筈の、しかも依然に国家レベルで大問題になったキング・スコルピオが店主である、とか。
 ありえそうなものから思わずなんだそれは、というレベルの代物まで様々である。
 だが、いずれにせよドーナツが大好きなセララとしては到底見過ごせるものではない。
 それに噂の真偽も確かめねばなるまい。
 こんな時こそ我らがローレットの情報屋の出番だ。
 その情報屋に依頼してからしばらくして。
 結局得られた情報の殆どがデマである、という結論に至った。
 ただひとつ重要な収穫があった。
 それは幻の店の場所がわかった、という事だ。
 その場所まで行くのに苦労するだろうが、それはそれ。
 パカダクラに乗っていけばいい。

 道中。
「暑い……」
 やっぱり砂漠。気温が物凄く高い。
 だからといって紫外線を防ぐ為のマントを脱ぐ訳にはいかない。
 砂漠において日光というものは洒落にならないぐらいやばい。
 肌を露出すれば低温火傷を起こす可能性がある。
 更には熱中症にも非常になりやすい。
 身体的に、そして命が危ない。
 それにこんなところで戦闘があったりするからやってられないのだ。
 わざわざこんなところで……とは思うのだが、そうも言ってられないのが砂漠の辛いところである。
 太陽で熱せられた砂の山を登り、谷を降り。パカダクラはその歩みを進める。
 ゆっくりと。確実に。
 途中で砂嵐にも遭った。あらかじめ砂嵐に遭った際の対処法も聞いておいて良かった。
 そして首都ネフェルストを立って数日後の夜。
「やっと……。やっと着いたのだ」
 もはやはしゃぐ元気もない。
 辿り着いたそこはオアシスだった。
 自分は情報屋から場所を聞いていたからまだ良かったが、ここをゼロから探すとなれば挫折してしまうだろう。
 見つかるか、こんな所。
 実際、客など本当に滅多に来ないのだろう。店主にも珍しがられた。
 酔狂な客だ、と。
「お互い様です……」
 それを聞いた店主はケラケラ笑いだした。
 それはそうだろう。こんなところで商売しているのだから。
 いったいどうやって生活をしているというのか。
 聞いてみてもそれは秘密だ、などとはぐらかされてしまった。
 そして今回の旅の目的であるドーナツだ。
 ペパーミント、レモン、パイナップルのソースをかけたドーナツをそれぞれ買う。
 暑さと疲れで弱った体にドーナツの清涼感ある甘味と酸味が体に染み渡る。
 もっと食べたい。体がドーナツを求めている。
 大量にドーナツを買いなおしたセララ。至福の時間。
 疲れた時に食べる料理はどんなものでも美味しいというが、それはそれとして。
 美味しい。
 それにお店の外で食べるドーナツも格別である。
 空を見上げればそこには星空満天の空。
 癒しのひと時だ。
 
 その日。店主がお店の居住スペースに泊めてくれる事になった。
 朝食もご馳走になり、帰りの分の食料も分けてくれた上に美味しいドーナツもくれた(!)。
 至れり尽くせりである。
 ちなみに帰りはモンスターやら盗賊やらに襲われたが、それはまた別の話である。
執筆:アルク

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