PandoraPartyProject

幕間

セララの幕間

関連キャラクター:セララ

ドーナツ屋訪問記・幻想編
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!」
 体が光に包まれ、変身モーション。
 そして光が弾け、登場したのは。
 魔法少女であり魔法騎士のセララ。
 変身バンクによるワンシーンだ。
 そして魔法少女のような変身モノは、変身が終わるまで敵は待機しているのがお約束である。
 変身中に攻撃するものもあるらしいが、セララちゃんに限ってそれはない。
 ……ないよね?ね?
 そこから始まる戦闘の一幕。
 そして。

 戦闘後。
 帰り道。
 くうぅぅ。
 可愛らしい音が鳴ったのはセララのお腹である。
「お腹が空いた……」
 しっかり運動(!?)した後だから仕方ないね。
 家に帰るにしても何か食べてからにしたい。
 それも今すぐ食べられる物がいい。
 ならばあそこがいい。
 幻想のドーナツ屋『lllusie donut』。
 種類が多くて安くて、何より美味しい。
 何よりここのドーナツはプレーンとシュガーのドーナツがいい。
 確かにこれだけ聞いたらシンプル、という言葉しか出てこないだろう。
 だが、それはそれ。余計な事は言わない、一度試してほしい。
 長年にわたって愛されている理由がわかるだろう。
 ダメだ、考えただけでも涎が出てくる。
 ついつい急いでしまうのはご愛敬。
 お店に着いた時はお客が既に沢山いる。
 人気店だから仕方ない。
 トレイとトングを持ち、プレーンとシュガーのドーナツを真っ先に探し出す。
 そして他のドーナツもどんどん載せていく。
 飲み物はこの店ではコーヒー、しかもブラックにするのが定番なのだが……。
 実はセララはブラックコーヒーが苦手である。コーヒー自体があまりあれなのだが……。
 なのでジュースを選ぶ。
 そして席に着く。
 トレイの上には山となったドーナツが。
 そのドーナツを物凄く美味しそうに食べながら至福のひと時を過ごすセララであった。
 その帰り道、その手にはドーナツが入った箱が握られていたとかなんとか。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・鉄帝編
 鉄帝の某所。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!」
 口上と共に変身するセララ。
 周囲には敵幹部とキーキーと言ってる怪人の群れ。
「魔法騎士セララ!アンタも今日で終わりだよ!」
「みんなー!魔法騎士セララが敵に囲まれて大変!皆で負けないでー!って応援するよー!」
 そんなナレーションを挟む女性。
 何をしているのかって?答えは至極簡単である。
 ヒーローショーならぬ魔法騎士ショーである。
「皆の応援があれば百人力!一気に行くよー!」
 ド派手な魔法が怪人達に直撃。
 え、それ大丈夫なのかって?
 ここをどこだと思ってるの?鉄帝だよ?
 そしてーー。

 子供達に夢と希望を届けるお仕事が終わった後。
「ドーナツ食べたい……」
 やはりお腹の空いたセララ。
 鉄帝にもドーナツ屋はある。
 その中でもおすすめは『筋肉ドーナツ』。
 プロテインの入ってそうな頭の悪い名前である。
 鉄帝らしいといえば鉄帝らしい。
 だが、真のドーナツ美食家は名前など気にならない。真に見るべきは名前などではない事を知っているからだ。
 そういえば実際にプロテインが入っている商品を出しているお店もあるらしい。
 が、筋肉ドーナツは入れていない。なぜだ。
 そして鉄帝のドーナツはスチームドーナツも有名なところである。
 鉄帝は元々蒸気と機械の国である。
 身近な所にそれらがあると言い換えてもいい。
 そしてそれは料理、延いてはドーナツも同様である。
 筋肉ドーナツもスチームドーナツの種類は豊富である。
 ホワイトチョコとピスタチオが載ったドーナツ。
 チョコレートにオレンジの欠片が載ったドーナツ。
 その他数種類を選ぶ。
 油で揚げたドーナツとは違い、しっとりとして胃もたれしない。
 ペロッと食べきってしまう。
 美味しい。まだ食べたい。
 が、食べ過ぎると太る。だが、食べたい。
 しばらく悶々としているセララであった。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・天義編
 とある学校。
 調理室を借りたセララが子供達の前に立つ。
「今日はドーナツを作るよ!」
「はーい!」
 元気に返事をする子供達。
 セララによるドーナツの料理教室である。
 なぜこんな事をしているのかと言われれば。

 ローレット。仕事を探しに来たセララ。
 いつも通り無数の依頼が並んでいる。
「……ん?」
 依頼の一つに目が留まる。
『子供達に料理を教えて頂ける方、募集』
 中身を見れば天義の孤児院である。
 天義といえば。
 冠位魔種『強欲』による冥刻イクリプスが発端による復興。
 その事件が原因で孤児も増えている。
 更にアドラスティアという問題まで発生してた。
 だが、人も資金も足りない為に中々手が回りきらない。
 とはいえ、それは『大人の事情』である為、子供には無関係である。
 天義としては当然何もしないという選択肢はない。
 セララが情報屋に聞いてみれば。
 今回の孤児院も例に漏れずお金がない。
 資金繰りに相当苦労したようだが、どうにか材料費と僅かばかりとはいえ報酬金を出せるようになった。
「うーん……」
「どうしたの?」
 何か考え込むセララ。情報屋が聞いてみれば。
「お金、ないんだよね?」
 報酬金が出せるとはいえ、貧乏である事に変わりはない。
 ならば。
 報酬金はなし、材料費も半分こちらで持てないか。
 セララの提案。
 依頼者との調整は最初は遠慮こそされたが、最後には無事に通過。
 そしてセララの趣味はお菓子作りである。この依頼をセララが受けるという形で仕事として成り立った訳だ。
 しかも子供の数もそれなりにいる為、どこか広い調理スペースを確保できる場所が欲しい。
 そんな時にたまたま学校の調理室を借りる事が出来たのだ。
 以上、長い回想終わり。

 とはいえ、手の込んだものは子供には無理だろう。
 10分ぐらいで作れるレシピがある。
 これなら少し時間あれば数は作れる筈だ。
 油で揚げる時は職員も一緒にやってもらえばいい。
 揚げる時はコツがあるのだが、仮に形が歪であったとしてもご愛敬というものだ。
 しばらくして完成。
 皿に盛り付け、着席。
 手を合わせ
「いっただきまーす!」
 終始笑顔の絶えない料理教室であったという。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・海洋編
 静寂の海。
 かつては絶望の青と呼ばれ、この海を制覇しようとした数多もの冒険者を跳ね返してきた海。
 しかし、今ではローレットと海洋ーーネオ・フロンティア海洋王国により踏破された過去がある。
 この海でローレットも海洋も甚大なる被害が出た、というのは置いておいて。
 その海洋にセララはやって来ていた。
 例の如く、ドーナツが目的である。
 そのドーナツにありつく前に一仕事こなさなければならない。
 というのも。
 ドーナツの材料の生産地がモンスターに縄張りとして占領されているというのだ。
 しかもこのドーナツというのが、少し変わったドーナツらしい。
 なんでもこの海、海洋深層水から作られた塩が使われているのだとか。
 セララとしては到底放置できるものではない。
 困っている人を助けるというのもあるが、ドーナツが作れなくやも知れないというのは非常に困る。
 ローレットのイレギュラーズと共に海上へ。
 船上が慌ただしい。どうやら現れたらしい。
 巨大イカだ。
 ちなみにダイオウイカはその大きさで有名だが。
 ギネスに載っているサイズだと体長13mで触腕の大きさで8.7mもあるらしい。
 流石に今回の巨大イカはそこまで大きくはないが触腕の数がある為に手数が多い。
 すべての攻撃をかわし切れない。
 迅速に討伐するしかない。
 そして。

「ふう、皆お疲れ様!」
 お互い労いあうイレギュラーズ。
 この後はお待ちかねのドーナツである。
 勿論お店側からの奢りである。
「ドーナツ♪ドーナツ♪」
 ご機嫌なセララ。一仕事終えた後のドーナツは格別であろう。
 用意されたのはオールドファッション系のドーナツが3種類。
 塩を使っただけのプレーン。純粋に塩とドーナツの味が楽しめる一品である。
 塩とレモンのドーナツ。塩とレモンの酸味の組み合わせが癖になる一品。
 塩とキャラメルのドーナツ。しょっぱさがキャラメルの甘さを引き立てる一品。
 はっきり言って美味しい。
 食べたりない。
 他の人が食べているのを見るとうっかり涎が出そう。
 どうせなら他のドーナツも食べてみたい。
 我慢できなくなったセララは急いで買いに行くのだった。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・練達編
 練達。
 旅人(ウォーカー)が集まり、国家として成った国。
 この国の面白いところの一つとして文化がごった煮である事が挙げられるだろう。
 ファンタジー世界から来た者もいればSF世界から来た者もいる。そしてそれ以外の諸々の世界からも、である。
 自分のいた世界とは全く異なる世界から、もしくは似た世界(もちろん同じ世界から来た者もいる)から人が集まるのだ。
 その文化の違いのせいで衝突が起きる事もあるが、折り合いをつけながら生活をする。
 その過程でその文化が混ざる事も珍しくもない。
 農林・水産、建設、商業などの経済活動から教育、政治に至るまで。
 特に科学技術に関しては目を見張るものがあるが、その技術力は料理まわりも例外ではない。
 その技術力云々は今回は置いておくとして。
 その練達の一角。
 レンタルスペースにセララはやって来ていた。
 何をしているのかと言えば。
 パーティーの準備の仕上げである。
 大規模召喚から5年目を祝って、である。
 それならセララの領地のある幻想でやればいいのでは、という当然の疑問があるだろう。
 練達はセララにとっては幻想に次ぐ『縁』のある場所である。
 魔法少女セララの映画が上映が大人気になるぐらいには。
 そして知名度は上がり、セララの知り合いは増える。
 特にドーナツ屋。
 セララはどこのドーナツ屋へ行っても超常連なのである。
 ローレットの仕事でセララが稼いだお金の殆どが練達のドーナツ屋につぎ込まれたのでは、という噂が立つぐらいだ。
 噂の真偽は本人のみぞ知るところである。
 なのでセララがパーティーをしようかと考えている、なんて言えば準備があれよあれよと進んでしまったのである。
 何故だ。セララの人望によるものだ。
 そしてセララのやる準備はと言えば。
 買い出しである。しかもドーナツ。
 練達のドーナツ各お店がはタダで提供してくれた。しかも大量に。
 更に各国へドーナツを買いに行くのだ。
 ……こんなに沢山のドーナツ、どうやって処理すんの?他の料理だってあるのに。
 ちなみにどんなドーナツを買いに行くかと言えば。今までの訪問記で紹介したアレである。
 まだ紹介していない国に関してはこれからのお楽しみ!
 買い物が終わり、部屋へ戻れば準備がすっかり出来上がっていた。
 手伝ってくれた方々は解散し、帰路に就く。
 パーティーの開始までまだ少し時間がある。
 パーティーには友人達を呼んだ。
 皆、喜んでくれるだろうか。喜んでくれるといいな。
 胸の高鳴りを抑えつつ、皆が来るのを部屋で待つセララだった。
 ああ、全てが終わったら準備を手伝ってくれた人達にちゃんとお礼をしに行かなければ。
ーー早く皆来ないかな。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・傭兵編
 ラサ。
 そう言われて想像するものと言えば。
 砂漠、赤犬の群れをはじめとする傭兵団。そして商人。
 商人がいるという事は当然お店がある。
 そのお店は多岐にわたるが、中にはドーナツ屋もある。
 ただひとつ、気になるのが幻のドーナツ屋があるというのだ。
 問題はその見つけにくさにある。
 実際に行った事がある者が少なすぎて、噂が噂を呼び尾ひれはひれが付きまくっている。
 この噂自体が実は盗賊団が獲物をおびき出すための罠である、とか。
 この店の主が死んだ筈の、しかも依然に国家レベルで大問題になったキング・スコルピオが店主である、とか。
 ありえそうなものから思わずなんだそれは、というレベルの代物まで様々である。
 だが、いずれにせよドーナツが大好きなセララとしては到底見過ごせるものではない。
 それに噂の真偽も確かめねばなるまい。
 こんな時こそ我らがローレットの情報屋の出番だ。
 その情報屋に依頼してからしばらくして。
 結局得られた情報の殆どがデマである、という結論に至った。
 ただひとつ重要な収穫があった。
 それは幻の店の場所がわかった、という事だ。
 その場所まで行くのに苦労するだろうが、それはそれ。
 パカダクラに乗っていけばいい。

 道中。
「暑い……」
 やっぱり砂漠。気温が物凄く高い。
 だからといって紫外線を防ぐ為のマントを脱ぐ訳にはいかない。
 砂漠において日光というものは洒落にならないぐらいやばい。
 肌を露出すれば低温火傷を起こす可能性がある。
 更には熱中症にも非常になりやすい。
 身体的に、そして命が危ない。
 それにこんなところで戦闘があったりするからやってられないのだ。
 わざわざこんなところで……とは思うのだが、そうも言ってられないのが砂漠の辛いところである。
 太陽で熱せられた砂の山を登り、谷を降り。パカダクラはその歩みを進める。
 ゆっくりと。確実に。
 途中で砂嵐にも遭った。あらかじめ砂嵐に遭った際の対処法も聞いておいて良かった。
 そして首都ネフェルストを立って数日後の夜。
「やっと……。やっと着いたのだ」
 もはやはしゃぐ元気もない。
 辿り着いたそこはオアシスだった。
 自分は情報屋から場所を聞いていたからまだ良かったが、ここをゼロから探すとなれば挫折してしまうだろう。
 見つかるか、こんな所。
 実際、客など本当に滅多に来ないのだろう。店主にも珍しがられた。
 酔狂な客だ、と。
「お互い様です……」
 それを聞いた店主はケラケラ笑いだした。
 それはそうだろう。こんなところで商売しているのだから。
 いったいどうやって生活をしているというのか。
 聞いてみてもそれは秘密だ、などとはぐらかされてしまった。
 そして今回の旅の目的であるドーナツだ。
 ペパーミント、レモン、パイナップルのソースをかけたドーナツをそれぞれ買う。
 暑さと疲れで弱った体にドーナツの清涼感ある甘味と酸味が体に染み渡る。
 もっと食べたい。体がドーナツを求めている。
 大量にドーナツを買いなおしたセララ。至福の時間。
 疲れた時に食べる料理はどんなものでも美味しいというが、それはそれとして。
 美味しい。
 それにお店の外で食べるドーナツも格別である。
 空を見上げればそこには星空満天の空。
 癒しのひと時だ。
 
 その日。店主がお店の居住スペースに泊めてくれる事になった。
 朝食もご馳走になり、帰りの分の食料も分けてくれた上に美味しいドーナツもくれた(!)。
 至れり尽くせりである。
 ちなみに帰りはモンスターやら盗賊やらに襲われたが、それはまた別の話である。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・境界編
 境界。境界図書館とも呼ばれるその場所は、果ての迷宮で見つかった巨大なる図書館。
 そこに所蔵されているライブノベルと呼ばれる本のうちのひとつ、『退廃世界グノーシス』へ境界案内人ミヤコの案内によってセララはやって来ていた。
 目的は勿論ドーナツ、である。
ーーだからといってなんでここに来るんだ。
 怪訝そうに、そして面倒臭そうに聞く海(カイ)。この男も境界案内人だ。
 なにしろこの世界、グノーシスは文明が既に滅んだ世界なのだ。
 生き残った人類もカイ以外は見つかっていない。
 ドーナツ屋などあろうものか。
「迎えに来たんだ、カイ!」
 セララは一度だけこの男と会った事がある。そのあたりの話は置いておくとして。
ーー……迎えに?
 ミヤコに案内されたのだろうが……。
 彼女にはカイ自身も世話になった事実がある。あるのだが、嫌な予感しかしない。
「とにかく図書館に来てほしい」
 真っすぐな目でカイを見るセララ。
ーー……。
 溜息をつきながらセララと共に境界図書館に戻るカイであった。

 図書館に帰り、セララはカイを調理室に案内した。
ーー……これは?
 カイに気付いたミヤコが近寄る。
ーーああ、カイ。来てくれたのか。
 説明しろ、と言わんばかりに目を細めるカイ。
「カイにはドーナツ作りを手伝ってほしいんだ」
ーー……は?ドーナツ、作り?
ーー本当ならどこかのライブノベルに案内しても良かったんだけど。どうせなら皆でドーナツを作って食べよう、ていう話になってね。
 キッチン台を見ればドーナツの材料であろう、一式が並べられている。
 これを準備する為にミヤコは来なかったのか。
 こんなところまで来て帰る、などと言うのは通用しないだろう。
ーーわかったわかった。やればいいんだろう。
「ありがとう!カイ!」
 満面の笑みを浮かべるセララ。
 ちなみにだが今回使う材料。
 ライブノベルに入り、調達してきたものである。しかも複数のライブノベル。
 そういえばミヤコの料理スキルは如何程なのか。
 カイはグノーシスで動物を狩り、解体・調理をしているから刃物自体は扱えるだろう。火も大丈夫のはずだ。
 ミヤコは……未知数だ。
「今更なんだけど。ミヤコって料理できるの?」
ーー私かい?できるよ?
 聞けばお酒のアテをよく作っているらしい。
 そういえば書斎にお酒の瓶数本と何かを食べたような跡があった。
 あれはそういう事なのか。
 実際二人とも手際が良い。
 カイに関しては流石にお菓子作りはやった事がなかったようだが、教えれば飲み込みが早い。
 今回のレシピは比較的簡単なものを選んだが、これなら後は放っておいても問題はないだろう。
 料理はやはり複数人でやると楽しい。
 一人でやる料理も決して悪くはないのだが、こうして誰かとお喋りしながら料理するのがいいのだ。
 しばらくして。

ーーやっと出来たか。
 疲れたと言わんばかりのカイだが、満更でもなさそうだ。
ーー楽しんでいたようだが?
ーーまあな。
「今日は付き合ってくれてありがとう、二人とも!」
 終始仲の良い三人だったが、様子を見に来た境界案内人いわく。
 仲の良い親子のようだった、という。
 カイがお父さんでミヤコがお姉さんで、などという空想をしながら三人でドーナツを食べるセララであった。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・豊穣編
 豊穣。かつて絶望の青を踏破し辿り着いた場所。
 『和』の国と言った方がわかりやすいだろう。
 その豊穣にセララはやって来ていた。
 目的は勿論ドーナツである。
 しかも和装に着替えて。
 いつもの洋装でも良かったのだが、風情というものがある。
 これから向かうお店も和のお店である為、和装の方が馴染みやすい。
 お店が点在する通りを行きかう人。
 その人も少ない為か、静かだ。
 その中にセララが一人。
 その姿は町娘のそれである。
ーーあら、セララちゃん。いらっしゃい。また来てくれたのね。
 ドーナツ屋『彩花』の看板娘だ。
「ここのドーナツはいつ食べても美味しいのだ」
 ありがとう、と笑い注文を受ける。
 抹茶ドーナツ。抹茶のチョコレートでコーティングされたイーストドーナツ。
 ほうじ茶ドーナツ。生地にほうじ茶を練りこんだオールドファッション。
 あんドーナツ。ドーナツの中に餡を入れたもの。こしあんタイプとつぶあんタイプがある。
 ドーナツと一緒にお茶もタダで出してくれた。
 それを店外に用意されている野点傘と毛氈が敷かれた長椅子セットの所へ持って行き、座る。
 周りを見渡す。
 建物同士の間にある竹垣の向こうには竹林が見て取れる。
 これは中々どうして趣がある。
 この中で食べるドーナツというのもいいものだ。
ーーこういう時間もたまにはいいよね。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・覇竜編
 覇竜。竜の棲家という危険極まりない場所にして、亜竜種が仲間となった地。
 「ドーナツのお店を出したい?」
ーーああ、そうだ。だから協力してほしい。
 ドラゴニアの男とそんな会話をするのはセララ。
 ドーナツ屋を新たに出すからとドーナツ好きとして有名なセララに相談を持ち掛けられたのだ。
 それはいいとして何をすればいいのか。
ーー生憎俺はデザストルから出たことがなくてな。
 聞けばイレギュラーズが覇竜にやってきてから客のニーズは変わってきているという。
 元々覇竜は閉ざされた地。
 それが外の世界の人が、しかも沢山出入りするようになれば覇竜のドラゴニアの在り様も変わろうというもの。
 おまけに自分達も外の世界へ行けるようになったのだ。その変化も拍車がかかるというもの。
 おかげで他のドラゴニアの趣味嗜好が変わっているという。
ーーだからどんなドーナツを作ればいいか、相談にのってほしい。
「ならさ。世界のドーナツを食べてみようよ!」
 実際にどんなドーナツが売れているのか、知るのも大事な事だ。
 各国で売られているドーナツを集めて試食会をやるのだ。

 それからしばらくして。
 机の上に広げられたのは各国のドーナツ達。
 しかも今までにドーナツ屋訪問記で紹介した奴。
ーーふむ、各国でそれぞれ特徴があるな。
 わかりやすいので言えば海洋の海洋深層水から精製された塩を使った塩ドーナツである。
 他にも鉄帝のスチームドーナツなんかもそうだ。
 しかも重くなく食べやすいのも特徴だ。
 ならば覇竜の場合はどのような特徴を出せるのか。
 頭を捻る。
「あ」
ーー?
「なら卵を変えるとかどうかな?」
 ドーナツに卵を使うレシピはよくある。使わないものもあるが、それは置いておくとして。
 卵は通常であれば鶏のものを使う。
ーー……ああ、なるほど。
 が、ここは覇竜。ドラゴンも棲まう場所。であれば
ーードラゴンの卵か。
 もちろんそれは危険極まりない提案である。
 ドラゴンの卵を使うという事は、彼らの巣に卵を盗みに行く事と同義である。
 下手したら死人が出る。
 だが、ローレットには実際に卵泥棒の実績がある。いや、本当に。
 実際そういう依頼があったのは事実である。
 ならば卵の調達はローレットに依頼すればいい。
ーーローレットに依頼を出そう。君も手伝ってくれるな?
「もちろん!」
 ドラゴンの卵は鶏のソレより濃厚とされている。今から非常に楽しみである。
 そして案の定ボロボロになって帰ってきたイレギュラーズ。
 ちゃんとドラゴンのモノらしく物凄く大きい卵を持って。

 それから日数が経ち。この男が出したドーナツ店『竜輪』のドーナツ、竜卵は人気商品になったという。
執筆:アルク
ドーナツ屋訪問記・練達編 スピンオフ
 5周年パーティーから幾日か経ち。
 セララは練達のとあるドーナツ屋にやって来ていた。
 パーティーの準備を手伝ってくれた人達にお礼も兼ねて報告にやって来ているのだ。
 そしてここのドーナツ屋で最後である。
 しばしの談笑。
 折角なのでドーナツも注文する。
 セララの前に差し出されるドーナツとは別にもう一つ。
 ブラックコーヒー。
 思わずジト目になるセララ。
 仕方があるまい。苦手なのだから。
 ならばなぜ注文をしたのか。
 セララとしては克服しておきたいのだ。
 このお店もそうだが、ブラックコーヒーと併せてドーナツを注文するのが定番のお店はよくある。
 実際に合うのかもしれないが、それはそれ。
「うぅ、苦い……」
 うん、やっぱり好きになれない。
 ドーナツは好きだ。
 だが、本当に好きなら都合のいいものだけやっていればいい、という事にはならない。
 特にこういう嗜好品は好き嫌いが現れやすいし、気にしなくても良いのかもしれない。
 が、本当にドーナツが好きであればブラックコーヒーを克服する必要がある。……と思う。
ーー砂糖とミルク、入れるかい?
 ちょっと意地悪そうに聞いてくる店主。
「ううん!大丈夫!」
 そう言い切って見せるが、手がすすまぬ。
 一口飲んでは手を止め、一口飲んではまた手を止め。苦そうな表情もして。
 その間にドーナツはすっかりなくなってしまった。思わず追加してしまう。
 その様子に店主は面白そうに見ているが、当の本人は真剣である。
 終始苦そうな顔をしているセララ。
 その後もブラックコーヒーを克服しようとチャレンジしているセララの姿が見られたという。
執筆:アルク
【怪談喫茶ニレンカムイ】セララの喫茶店訪問記
 練達の希望ヶ浜。
 地球から召喚された事により強制的な変化を受け入れられなかった者達が住む場所。
 『混沌』と言う名の異世界。そして『夜妖』という名のモンスター。
 理不尽と不条理から目を瞑り、元の生活を取り戻そうとする者達。
 練達と言う場所自体純種からすれば異世界感はあるが、それは希望ヶ浜も例外ではない。
 夕暮れ時。
 そんな場所の一角をセララは散策していた。
 歴史を感じさせる町屋が立ち並ぶその場所は、夕日に照らし出され綺麗だ。
「そういえばそろそろお腹がすいてきたな」
 ふと横を見れば一つの看板が目に入る。
 怪談喫茶ニレンカムイ。
(怪談喫茶?なんだろう)
 怪談と喫茶店が結びつかない。
 興味も相まって中に入る。
「いらっしゃ……!?」
 目を見張る店員らしき女の子。セララと同世代ぐらいの子だろうか。
「魔法騎士セララちゃん!?」
 わーわーと騒ぐ店員。
「ちょっと翠、何やってるの!」
「だってだって!」
 双子だろうか、スイと呼ばれた子と似た子もそわそわしているのが見て取れる。
「こら!二人ともお客様を席に案内しなさい!」
「「はあい!」」
 店長らしき女性が見かねたのだろう、カウンターから声が飛んでくる。
 席に着き手渡されるメニュー表。
 中身自体は他の飲食店となんら変わらないメニューである。
 このお店のお化け要素のあるオリジナルメニューもあるが、これで怪談喫茶を名乗るのは疑問である。
 そのあたりは後で聞くとして、どうしても気になるものが一つ。
 チョコ増し増しドーナツ。
 チョコレートの生地に更にチョコレートでコーティングした代物である。
 これをついつい山のように注文してしまう。
 チョコチョコしい。至福のひと時。
 ……なのだが、少女達の視線が凄く気になる。
 一人は目を輝かせ、もう一人は気にしないふりをしつつもちらちら気にしてるのがわかる。
「どうしたの?」
「あの、魔法騎士のセララちゃんだよね!?」
 『魔法少女セララ the MOVIE』。秋葉原の方で放映されていた映画であるが。
 ああ、なるほど。この二人はあれを見たのか。
「そうだよー」
 芸能人に会ったような反応する少女達。おまけにローレット所属である事も知っているらしい。
 冒頭で述べた通り希望ヶ浜は非日常を容認しない。それを知っている、という事は。
「ここ怪談喫茶ニレンカムイはカフェ・ローレットと連携し、夜妖の情報も提供しているんです」
 結月と名乗った女性は続ける。
「我々3人が情報屋として皆様に依頼を出しますので何かあれば宜しくお願いします」
「わかりました」
 セララとしても断る理由はない。
「それと……怪談喫茶って?」
「ああ、それならーー」
 ちらっと結月が本棚の方へ目をやると
「これだよ」
 蓮と名乗った少女が1冊の本を持ってくる。その内容は怪談モノである。
 怪談系の本を集めたり、過去の夜妖の情報を本にしたりして店においてあるらしい。
 帰り際。
「あの2人、見ての通りセララさんの大ファンでして。仲良くしてやっていただけると嬉しいです」
「勿論です」
 そして翠と名乗った天真爛漫な少女とこまっしゃくれて素直になれない蓮がセララを引き留め、結月に叱られたのはご愛敬である。
執筆:アルク

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