PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

穏やかな日々

関連キャラクター:伊達 千尋

てるてる坊主

「……あ」
「千尋さん?」
 居間のテレビを見て声をあげた千尋に寿は瞬いた。
 もうすぐ六月。つまり梅雨が近付いてくる。それよりも先にピクニックにいこうと計画していたのに、ピクニック当日の今週末は狙ったかのように降水確率100%。なんでや。
「寿ちゃんどうすっぺ。俺は予定変えるのも出来るけど、寿ちゃんにも予定あるだろうし」
「……てるてる坊主」
「ん?」
「てるてる坊主、作りましょう!」
 きゅっと手で小さな拳を作った寿は、押し入れからせかせかと余り布を用意する。
「せっかく作るんですから、おめかしさせてあげませんと」
「寿ちゃんてば天才か?」
「え、えへへ」
 頭につめるのはふわふわのティッシュペーパー。ボタンを目の代わりにして、ぶらさげるときはリボンで。
 最初こそ週末に雨が降らないようにと願っていたはずなのに、いつのまにやら作るのが楽しくなってしまった。
「寿ちゃん、俺の見てくんね?」
「これは……猫ちゃん……!!」
「正解花丸百点満点! 遊び心を加えるのも職人技ってワケよ」
「なるほど……はっ、私もうさきざんなんかを作ってみたりしても?」
「モチのロン!」
 そうして。ふたりの努力の甲斐あってか、ティッシュを一箱使い果たして作り上げたてるてる坊主の大家族は、ずらりと縁側に並んだ。
「これで晴れると良いのですが……」

 ――そして、週末。
「やっべ、おにぎりデカすぎた」
「は、半分に……わっ、わ、鮭が!」
「寿ちゃんヘルプミー!!」
 朝からせかせかと、ふたりならんでおにぎりを握る。午後から晴れるのだと告げる天気予報。てるてる坊主の効果だろうか、降水確率に見事打ち勝ったのだ。
 ふたり仲良くキッチンに並んでお握りを握る姿は大変なかむつまじく。
「……って、ああ! 卵焼き、焼いてません……!」
「お握りは俺に任せな! 寿ちゃんは卵焼きを頼むぜ……」
「はい、千尋さんとお弁当のためにがんばります!!」
執筆:

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