PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

穏やかな日々

関連キャラクター:伊達 千尋

麦茶と縁側
 縁側で、千尋と寿は涼んでいた。
 つい先日まで桜の季節だと思っていたのに、もう躑躅が散りかけている。
 季節の移ろいが年を重ねるごとに早く感じるようになった。

 寿と他愛ない会話をし、時に笑い時に頷く。
 そんな穏やかで優しい時間。

「今、冷たいお茶を持ってきますね」
「ありがと、寿ちゃん」
 ぱたぱたと台所へ駆けていく寿の小さな背中を千尋は眺めた。
 少し力を込めて抱きしめれば簡単に壊れてしまいそうな華奢な背中だった。
「俺が護らねェとな……」
 一人呟いた言葉は寿には聞こえていない。
 千尋は再度前を向く。
 バイクに乗っている時に身体で切る風も疾走感があって好きだが、こうして寿と共に縁側で過ごしている時に頬を撫でる風も優しくて好きだった。
 目を閉じれば風が木々を揺らす音と、ちちと小鳥が愛らしく囀る声が聞こえてくる。

「伊達さん?」
「あっ、ごめん。ボーっとしてた」
 差し出された麦茶を受け取り、千尋はグラスを傾ける。
 冷えた麦茶は蒸し暑くなってきたこの頃にぴったりで、喉の渇きを潤してくれる。
「うめぇなあ、寿ちゃんの麦茶やっぱ好きだわ」
「お粗末様です」

 平和で暖かな陽だまりの日々はずっと続いていく。
執筆:

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