PandoraPartyProject

幕間

よろずな美術館

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

雨宿り。ひとり、或いは誰かと共に過ごす時間
雨が止むまで木陰で雨宿りはいかが?
傘片手に或いは一つの傘に身を寄せ合って街に繰り出すも。
過去に思いを馳せるも誰かと語り合うも良し
雨音が全てをかき消してくれるでしょう
執筆:いつき
星が輝く夜に
 どこかの丘で貴方は星を見上げている。

 遥か頭上に広がっている星空は、濃紺の天鵞絨に宝石の様に散りばっていて、今日も変わらず命を燃やし輝いている。
 流星が一筋流れて、美しい最期を迎えた。
 
 もしかしたら、一人で誰かを想っているかもしれないし。
 もしかしたら、その誰かと一緒に見ているかもしれない。
 
 そんなとある日の夜の噺。
執筆:
誰もがお前になりたかった/どうしてお前だけが
あらゆる名刀、名剣、刃のつく武器の切っ先が、あなたに向けられている。
『誰かの特別になれるなんて』
『切れ味は僕の方が上なのに』
『私はあなたより美しいのに』
『屠った数なら負けていない』
数々の恨み・妬みの声が聞こえる。嘗ての同胞か、見知らぬ何かかは分からない。
声は絶えず反響し、今かいまかと、あなたに成り代わろうとする鋭利な感情が突き刺さる。

四方八方を武器に囲まれながら、中央に佇むあなたは何を思うだろうか。
世界と戦う力を貸して、と少女は叫んだ。
荒廃の地、恐れながらも戦う覚悟をした少女。
彼女は震える身体で別れの剣を手に取る。
剣を鞘からの半身を晒した所で頭上から光が降り注ぐ。
その光から頭を下に、微笑む青年がゆっくり降りてくる。
直感的に理解する。彼がヴェルグリーズだ。
今、両手に抱き止めた剣と彼がヴェルグリーズだ。
執筆:桜蝶 京嵐
雨上がりのアンブレラスカイ
しとしと、ぽつぽつ。雨が歌う。
葉や軒に跳ねて歌う雨粒の音は、今日は頭上から響いてくる。
頭上には様々な色の傘たちが咲いている。
赤、青、緑、水色、黄色――色だけじゃなく、形にも個性が溢れている。

しとしと、ぽつぽつ、歌う傘たちの下を歩くのも楽しいけれど、もっと楽しいひと時がある。
それは、雲間から太陽が覗く瞬間。
雨の歌は消えてしまうけれど、陽の光を浴びた傘たちが地面に美しい色彩を描く。
晴れたことに気づいた子供たちが、地面に映った特定の色だけを踏む遊びを始める。
大人たちは雨に煌めく傘越しの空を見上げて、楽しげに笑うことだろう。

――まるでステンドグラスね。
なんて笑いあえる誰かとの、この時期ならではのお散歩はいかが?
執筆:壱花
解けない拘束
あなたの首はレースの首輪で所有権を示されてる。簡単に解けるそれを貴方は解かない。
あなたの瞳はレースのアイマスクで隠されている。それでも瞳の煌めきは刃のように鋭い。
あなたの腕はレースの紐によって拘束されている。それでも貴方に抵抗の意思はない。
あなたの意志に自由はない。あなたの言葉に意味はない。

それでもあなたは、その拘束を解かない。それでもあなたは、輝きを失わない。
その姿はまるであなた自身が拘束を望んでいるようだ。
執筆:紫獄
天穹
 あなたは小さな子供部屋に『空』を描いた。

 部屋の扉がある壁は抜ける様な蒼天。其処から時計回りに四方の壁は時を移ろい行く。
 夕日と満開の桜を柔らかに抱く春茜。
 何時かふたりで綴った出鱈目な星座は満天に輝いて。
 暁天が軈て白む頃には白鳥が西を目指し飛び立った。

 ずぅっと脚立に載って、上を向いて描くのには少し骨が折れたけれど。天井にはお日様とお月様。
 人の仔を真似て南の壁にはカーテンを取り付けたけど、睡るのが大好きなあの子の為に窓は無い。
 その代わり、少し小さいけれど三人が入って内緒話をするには十分なティピーテントを張って、星の洋燈をひとつ落とす。
 睡たくなったら、傍に銀猫と黒猫が寄り添う柔らな絲で編まれた釣床で、おやすみなさい。
執筆:しらね葵
別離の繰り返しの先には
 どこかの舞台だろうか、中央にのみライトが注がれる。
 そのライトが見せるのは、地面が見えぬほど見渡す限り糸の山。
 細い糸から太いもの、素材もバラバラの糸がただ無造作に、積み上げられた山。
 そしてその頂上に、剣が刺さる。
 剣の剣先にはマントのみを刺し貫かれて眠る青年。
 心配は要らない。何故なら彼はーー、彼こそが。
 ヴェルグリーズ。別離れの剣の精霊体そのものである。
 数多の別離に用いられてきたその剣。
 今は人の友として戦う者として、傷を癒して力を蓄えたり。

 ……そして次の別離まで、おやすみなさい。
執筆:桜蝶 京嵐
薔薇の棺
 真っ赤な薔薇が敷き詰められた棺の中、貴方は手を組み、胸元には貴方の本体たる剣が横たわっている。
 祈る様に瞳を閉じ眠る貴方は、硝子ケヱスに納められた芸術品の様に美しい。
 その頬から首にかけて伝う罅を嫋やかな手がなぞる。
 天から優しく透明な雫が降り注いで、貴方を濡らした。

「――」

 沢山戦って、沢山愛された貴方。
 深い深い眠りについている貴方。

「――」
 
 優しくて、切ない声が心を揺らす。
 唯の剣であった時には存在しえなかった心。
 暖かな光に導かれるように、貴方の意識は闇から浮上した。
 そっと、瞼を持ち上げて視界に映る『彼女』へ微笑んだ。

「――おはよう」
  
 眠りから覚めた貴方の物語の一頁。
 
執筆:
言葉などなくても
 あなたは誰かと手を繋いでいた。きっと大切な人と。
 けれどその手は今にも離れようとしている。いつか硬く結ばれていた手は今は解け、指先だけがたどたどしく絡んでいる。
 あなたはその手を見つめながら、さよなら、と唇だけで囁いた。

 これが何万回の別れのうちのひとつでも。
 きっと幾度も繰り返したそのひとつでも。

 寂しい、と。
 顔を見ればわかってしまった。
執筆:凍雨

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