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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

メイメイと不思議いきもの図鑑

関連キャラクター:メイメイ・ルー

やわらかないきもの
(……?)
 メイメイは、ころんと転がる――毛虫に似た、だが動物のものだと見てすぐにわかる、不可思議な長毛の――生物を見て首を傾げた。大きさは手のひらに収まるくらいだろうか。その小さな生き物は、花壇に植えられた、赤いチューリップの根元でちんまりとその身を丸くしていた。白い体毛は、陽光を受けてつやつやしている。
 虫……には、やはり見えない。頭の中で疑問符を浮かべながら、指を伸ばし、やはり引っ込める。それをしばらくの間繰り返しつつ、じっと見ていると、不意に、生き物がゆっくりと頭――おそらく――を上げた。
「わ」
 驚きに声を上げるのと殆ど同時、にゅ、と、白い何かが何本か伸びてきて、メイメイの頭頂部に触れた。そのまま彼女の頭を撫でるように動き始めた何か、その感触に、何故だかひどく、心が穏やかになってくる。なんだかとても、温かい。意識が遠のく。ゆるやかな春の午後、あるいは夏の湖を撫でる、柔らかな風……そういったものを思い出させる優しい感覚に、彼女は静かに身を委ねる。危険なものだとは思えなかったから。
 ゆりかごで眠るような時間がほんの少しだけ続いて――メイメイは、ふと、いつの間にか閉じていた目を開いた。なんだかとても、調子がいい。あの生き物のおかげだろうか。
「あ、あの――」
 ありがとう、と言おうとしたメイメイの前からは、既に生き物は消えていた。
執筆:桐谷羊治

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