PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

シェフの気まぐれコース

関連キャラクター:小金井・正純

泡沫
●淡夢
 春はあけぼの。
 不器用で、それから優しい貴方は桜の枝を折った遮那を叱っておいででしたね。
 そのお顔が厳しくなりすぎないように、甘やかになりすぎないように四苦八苦をして。
 花を愛でる風流と作法を教えてくれました。

 夏は夜。
 満天の星に月。河原に瞬くの無数の蛍。
「まるでそなたのように美しいな」なんて。
 意地の悪い冗談だったのでしょう? それとも私の顔色に気付いたでしょうか?

 秋は夕暮れ。
 茜色の山で紅葉を狩りました。
 はらりと落ちた紅葉を手に取って、難しい顔をして。
 お詠みになられた歌を――貴方は覚えておいででしょうか?

 冬はつとめて。
 白化粧を纏ったお屋敷は年の瀬に慌ただしくて。
 貴方様は掃除に追われる家人に所在なくお部屋にお篭りになられていましたね。
 何でもお上手な貴方様がそんな風なのは何だか何処か可笑しくて。
 笑ったら、少しむくれておいででした。

 夢を。
 夢を見たのです。
 四季折々の夢を。
 誰か誰かの過ごした数度の季節を、巡る時間の一片を。
 どうして、私が見たのかは分からないけれど。
 目覚めれば全ての輪郭がぼやけてしまうような、泡沫に過ぎなかったけれど。
 私は確かに、その日夢を見たのです――
執筆:YAMIDEITEI

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