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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

四方山

関連キャラクター:彼岸会 空観

一度だけ、ですよ
「その節はどうもお世話になりました」
「はて、何の事やら。記憶に無いなあ」
 屋敷の縁側で庭の花を眺める死牡丹・梅泉(p3n000087)に茶を入れた彼岸会 空観(p3p007169)は嘯く言葉に嘆息する。
(いけず、の気持ちが分かりましたとも)
 しきりにそう繰り返した紫乃宮 たては(p3n000190)の『あっかんべー』が脳裏に過ぎる。
(……それから、『そういう』お気持ちも)
 遥か東の果て、豊穣の山中で悪鬼と見えた事件は彼女にとって衝撃的なものだったのだが……
 彼女の窮地を救った男の方は素知らぬ顔をして――実に素っ気ない事に彼女に礼も言わせぬらしい。
「紫陽花はもう少しか。風鈴をぶら下げるにもまだ早い。
 一つ詠むにも中々難しい季節じゃな」
 片目を閉じたまま、思案顔をした梅泉の言葉に空観は微笑んだ。
 一度剣を抜けばあれ程までに苛烈であるのに、剣呑が抜ければ恐ろしい位に穏やかで風流である。
 一度ならず剣を交わし――この先に『敵』にもなりかねぬ己の元を訪れて、隙だらけの背中を晒している。
 それは圧倒的な自信か、信頼か。
(――いえ、このまま斬りかかってもとても敵わないのでしょうけれど)
 事実は口惜しく、同時に胸を高鳴らせる。
 恋した男は何処までも強く、空観の心を捉えて離さない。
 それもこれも、悪癖も何もかも。『だからこそ、望む所』だ。
「……兎に角、少し恥ずかしい所を見せたのは確かです」
「そんな『良いもの』を見せて貰った記憶は無いがな」
「……ふふ、ですが次はありません」
「……ふむ?」
「一度だけ、ですよ」
 在り様に誓い、この想いに誓って。
 顎に手をやった男は手弱女何かを求めないだろうから――
「頼んでも一度か?
 いや、違うな。『頼めば一度』か。
 わしも鬼、主も鬼にて。
 似合いの収奪ならばそれも変わろう?」
「――――」
 空観は思わず真っ赤になった。
 死牡丹梅泉は無理矢理取り立てると云う。
 いや、確かに次は困るのだが、彼に求められると、それは困る。
 彼岸会空観としては全く困る――
執筆:YAMIDEITEI

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