PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

みんなの話:ちょっとした幕間

関連キャラクター:武器商人

ミョールとリリコ~水着と鏡~
 鼻歌を歌いながらリリコが姿見の前でくるりくるりと回っている。頬は喜びで染まり、回る度に膨らむパレオが気分を浮き立たせる。
「リリコー、入るわよー?」
 ミョールがふすまを叩いた。いらえを返すと、彼女は入ってくるなり大きな声を出した。
「すてきじゃないリリコ! モデルみたいよ!」
「……銀の月のおかげよ。私は別に」
「似合ってるって言ってるんだから素直に受け取りなさいよね」
「……そういうミョールも、似合ってる」
 ミョールは桜紋様で染まった着物と袴を着込んでいる。子供用の丈の短い着物だが大胆な染めが華やかで愛らしい。
「ま、まあ? アイツが選んだものではずれはないし?」
「アイツ呼ばわりはしないで、私の銀の月を」
 腕を組んであさってを向いたミョールをリリコは軽くにらんだ。
「そうそう、忘れるところだった、あんたの銀の月から贈り物」
 ミョールは袱紗に入った丸い手鏡を二枚取り出した。
「ひとつはあたしの、ひとつはリリコの」
「……これは?」
「えへへー、帰り道におねだりして買ってもらっちゃったの。あんまりきれいだったから、リリコの分も。みんなにはないしょよ?」
「……ミョールったら」
 呆れ顔でそれを受け取ったリリコは、小さく微笑んだ。
「護りの魔法がかかってる」
「へ、そうなの?」
「うん……」
 リリコは手鏡を抱きしめた。ぬくもりが伝わってくるかのようだった。
「……いつも見守ってくれてありがとう、私の銀の月」
「リリコは武器商人にぞっこんね」
「……そうね、小鳥やラスといっしょにいるところを見ると、もっと胸が暖かくなるの。これからも、仲良くしていきたいわ」
「へえー、あたしは、あたしだけ見ていて欲しいって思っちゃうケド」
「……思い描いた幸せがそのままの姿で存在するのなら、大切にしなくてはと思うけれど」
「そう? リリコはもうちょっと自分自身が幸せになることを考えたほうがよくない?」
「……そういうのは、いいわ」
 リリコは小さく首を振った。生き残ってしまったあの時から、リリコは自分の価値を見いだせない。それでもいい。愛しい存在が居て、愛することを思い出せたのだ。それが叶わないとしても、充分な対価を、リリコはもらっている。手鏡の中に写る自分の瞳は、満足そうだった。
「……海に行きたいわね」
「あら珍しい。リリコが何かねだるなんて」
「……だってこんなにすてきな水着を贈ってもらったのだもの」
 微笑みがさんざめいた。

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