PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

みんなの話:ちょっとした幕間

関連キャラクター:武器商人

双子の話~『ユリック』~
 夜半に豊穣を訪れたそのモノは、月を見ていた背中へ声をかけた。
「こんばんは『ダリューン』」
 その少年はゆっくりと武器商人を振り返った。
「にーちゃん、どこで知ったんだよ、その名前」
「風のうわさで聞いただけだよ。君と同じ名前のコが居たと、そのコが兄をそう呼んだと」
 誰の名前なんだろうねと、武器商人はなぞなぞでもしているかのように首を傾げてみせる。ユリックと名乗る少年は、また月を見上げた。
「……昔、まあまあ名の知れたキャラバンがあった。けど賊に襲われて壊滅した。生き残った双子が、頼りにしたのは幻想の孤児院。だけどそこへたどり着くには、水も食料も路銀も足りなさすぎたし、弟は足を怪我していて歩ける状態じゃなかった。兄貴は弟を背負って毎日必死で歩いた。けどそんな無茶が長続きするはずもなくて……」
 あいつは首をくくった。俺を生かすために。煉瓦みたいに硬いパンと、一掴みの塩、ぬるい水のために犠牲になった。あいつが首をくくったその下で、俺は夢中でパンへかぶりついてたよ。
「俺なんかよりずっと生きる価値があったのに……」
「だからキミは弟の名を継いだんだね」
「にーちゃん、そいつ今どうなってる?」
「死んだよ」
 そうかと少年は笑った。
「危うく俺がぶっ殺しに行くとこだったわ。手間が省けてよかった」

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