PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

みんなの話:ちょっとした幕間

関連キャラクター:武器商人

パン屋とそのモノとアーノルドのお話~ちょっとした~
「なぁ、アーノルド」
 その青年はアーノルドを見つめた。
「……真面目な話、お金に困ってる認識で間違いはないよな? 腹すかせた部下さんもいるんだろ?」
 だから、と、青年はごくりと喉を鳴らした。
「うちで働かない? 雇うよ? あ、もししっかり働いてくれるなら、焼き立てパンの賄いが付いてくるし、売れ残りは持って帰ってもいい。連続ログインならぬ連勤ボーナスだな。ちゃんと休みのシフトは入れるし、福利厚生はバッチシだぞ」
 ね、師匠? と、青年は武器商人を振り返った。しかたないコだねぇといわんばかりのソレはゆっくりと歌うように口を開いた。
「うちのギルドは役割を細分化しているから、店舗経営課以外でも働ける。シフトの自由度は勿論のこと、完全週休二日制だ。有給、各種手当、社宅、なんでもあり。その気になれば教育事業部の研修で手に職つけたりキャリアアップもできる」
 そのモノは哀れなものを見る目でアーノルドを見た。
「サヨナキドリは歓迎するよ、『ソレをキミが望むなら』」
 アーノルドはかすかに笑った。
「そこのソレは面白がってるだけだろう」
「あれ、ばれちゃったかい?」
「わかるよ。僕もけっこう『目』がいいんだよね」
 肩をそびやかすアーノルドへ、青年が一歩近寄る。
「どうなんだ、アーノルド」
 しろがねの瞳の遂行者は、無言のまま人差し指を青年の唇へあてた。
「わっ、なにすんだよ」
「ふふっ、くっくっく」
 おかしくてたまらないと言いたげに笑っていたアーノルドが目を伏せた。
「君らには、もっと早くに出会いたかったよ」
 だけど、あのとき僕を救ってくれたのは、神だったんだよな。
「こうして君らと遊ぶのも、最後かもしれないと思うと、すこしさみしいね」
 ちらほらと小雪が舞う。白い息を吐きながら、冷気の向こうへ遂行者は消えていった。
「師匠」
「なんだい」
「俺、あいつのことそんなに悪いやつじゃないように思うんですが……」
 今度は武器商人が青年の頬をつついた。
「そう考えるのは教え子の勝手だけれど、豊穣の村を焼いたのもやっぱり彼だよ」
 そうですねとしゅんとした青年を抱き寄せ、武器商人はささやく。
「教え子のその優しさが、命取りにならないことを祈ってるよ」

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