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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ウルトラ・ロマンティック

関連キャラクター:伏見 行人

戚容
 ふたり分の『グズ、グズ……』と咽び泣き鼻を啜る音が部屋を満たしている。

 ――→時を遡る事、数刻――→

「行人くん、此れは?」
「うん、俺が教えてる生徒がね。『先生も戀とかした方が好いって! なんか朴念仁っぽいし!』って押し付けて来てね」
「朴念仁……」
 アントワーヌはプ、と堪え切れなかった様に笑い出し、『そうだね、私のお姫様の解釈は概ね其れで合ってると思うよ』と。
「そんなに愛想が無いかい?」
「いいや、判らず屋って事さ。其れにしても漫画かあ」

 ――→そうして、捲り始めたが最後――→

「グズッ、何て健気なんだ! 難病を患い想い続けながらも別れを告げるだなんて! 次の巻は読み終わっているかな?!」
「グズ……ネタバレになるけど良い? 凄い尊い展開」
「もうティッシュが足りないじゃないか!」

 こんな調子が、希望ヶ浜の大手ショッピングモールのショッパーに入っていた全24巻を読み終わるまで続いたのだ。



「嗚呼、そうだ。けれど『判ってはいるさ』」
「むう」

 本日の勝敗、行人の勝ち。
執筆:しらね葵

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