イラストSS

　内戦は、ゼシュテルに大きな傷を残した。
　その傷はまだ癒えていない。失った友や家族は戻らず、故郷は荒れ果て、生活は未だ苦しいままだ。
　だがそれでも、内戦は終わった。復興は途上だが、後は前を向いて進むだけなのだ。
　だから聖夜くらいはと、クラースナヤ・ズヴェズダーの面々は教会に集まり、食事を持ち寄って密かに酒盃を交わす。
　散っていった仲間を悼み、ゼシュテルを豊かにし万民を救う悲願を成し遂げるという誓いを新たにしなが――。
「待ちなさいマカール！　今度という今度は我慢ならなくてよ！！　私の鉄槌をお喰らいなさい！」
　ヴァレーリヤのクロスチョップが炸裂した。
「分かった分かった、悪かったって！　取っといた酒を飲んだくらいでそんな怒ること！？」
　必至に逃げるマカール。が、そのせいだろう。ヴァレーリヤ渾身のクロスチョップは見事にダニイールへと直撃した。
「ですから大司教、貴方のやり方は性急過ぎるのです！　クラースナヤ・ズヴェズダーは、急激に大きくなり過ぎた。しばらくは安全策を取らなければうおおおお！！？？」
「そいつは分かってる。だがなあ、これは俺達にとっちゃ二度と無いチャンスだ。多少のリスクはあるだろうが、活かさねえ手は――何！？」
　もんどりうって倒れるダニイールを前に、熱心に討論を交わしていたヴァルフォロメイが二度見する。
「わあっはっはっはっは！！！！　酷えザマだなダニイール！」
「だ、大丈夫ですかダニイール司教様！？」
　そこへ駆け寄るアミナ。白目を剥いてぴくぴくしているダニイールを抱え上げ、メディックを全力で呼んでいる。
「なんだ今の音は……やれやれ、また騒がしくなりそうだ」
　ヴァレーリヤたちが騒がしいのは今に始まったことではないらしい。
　ムラトはやれやれといった様子で首を振り、盃をそっと持ち上げる。
　そしてボリスラフとの話し合いに戻った。
「そんなこともありましたな。思えばあの方は、いつだって私達のために戦ってくれていました。アナスタシア様の部下としてヴィーザルへ赴いた時も……」
　思い出を語るボリスラフ。
　こうなると長いなとムラトは思いながらもうんうんと頷いてやる。
　一方で、ラウラとイヴァンは二人の世界を作っていた。
「これとっても美味しい！　どこで買ってきたのかしら、後でアミナ司祭に聞いておかないといけないわね。イヴァンも一口食べる？」
「俺は後でもらうから良いよ。それよりラウラ、喉が渇くだろう。何かジュースでも持ってきてやろうか？」
　そんな具合で、今年のシャイネンナハトも賑やかに過ごすクラースナヤズヴェズダーであった。
　きっとそれは、世界の終わりまで続く賑やかさなのだろう。

　※SS担当：黒筆墨汁