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ひとつのマフラーをふたりで
ひとつのマフラーをふたりで
イラストSS
冬の公園は冷たく澄んだ空気に満ちていて、風が吹くたびに寒さを刻み込んでくる。
びゅう、と吹いた風にウルズは「寒い寒い」と身体を縮こまらせた。
ウルズは隣に座るフラーゴラを気遣った。
「先輩寒くねぇっすか?」
「ワタシは狼の獣種だから寒いのはへーきへーき……へくちっ!」
鼻先も手先も赤くかじかんで、説得力の無い先輩の姿にウルズは溜息を吐く。
「ほら。言わんこっちゃねぇっす……あ、そうだ!」
ウルズ自身がかけていたマフラーを緩めて、そっとフラーゴラの首に回し掛けた。
「わ、わ、あったかい……!」
「フラーゴラ先輩が風邪引いちゃったらあたし、悲しいっす! 素直に包まれておいてほしいっす!」
ウルズの人懐こい笑みに釣られて、フラーゴラは、はにかんだ。
「ありがとう……うん、そうだね。折角だからお言葉に甘えちゃおうかな」
「そういえばこの後どうするんすか?」
「そうだねぇ……お買い物もしたいし、ご飯も食べたいし……」
「悩んじゃうっすね!」
ベンチに座って予定を立てる二人に、再度冷たい風が吹き付ける。
けれど、今度は寒いとは思わなかった。
思いやりは何時だって暖かいのだ。
※SS担当:白