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マルク・シリングのあきやま菜摘による2人ピンナップクリスマス2023
マルク・シリングのあきやま菜摘による2人ピンナップクリスマス2023
イラストSS
何処に行くとも告げずに、あなたは直ぐに駆けだして言ってしまうから。
筆で追いかけることだって、間に合うことはないのだ。
風のように軽やかな足取りで、戦陣の只中で立っている。その姿に強く、強く、心が惹かれた。
凜とした心の美しい人だった。
その聡明さは、決意の表れだったのだろう。己の筆で書き連ねれば彼の強い部分ばかりが顕れた。
今度もまた何処かに行ってしまったのだ。薔薇の咲き誇る庭園だと聞いていた。嘸、美しい所だったのだろう。
ロスタイムだと時間の猶予が与えられた際にも彼は何一つたりとも云う事は無かった。
気丈に振る舞っていたのではなくて、多分、屹度――
(あなたは、前だけを見ていたのでしょう。
薄暗い想いも、苦しみの欠片の一つさえもないとでも言う様に、直向きに世界を見据えていたのでしょう。
何時だって、あなたはそうだったから。けれど、)
リンディスは本を抱え蹲る。シャイネンナハトを迎えるに当たって少しずつ集めた飾りも、街灯りも、何もかもがリンディスには眩すぎた。
こうやって、置いて行ってしまうから。
マルクさん。
あなたはいつだって、そうだったから。
マルクさん。
……私は、どうすれば。
言葉に出来ないまま、リンディスは一人重苦しい息を吐き出した。
*SS担当:夏あかね