イラストSS

　仕事を終えて帰りつく。外した装甲は完全に冷え切っていて、ルクトは改めて外が寒かったことを実感した。
「おかえり」
　仕事の報告をしようと部屋に入れば彼女の主、アレックスが出迎えてくれる。机の上にプレゼントやケーキが置かれているのは今日がシャイネンナハトだからだろうか。
　外は寒かっただろうと労ってくれる彼に、寒さには慣れているからとルクトは報告を続けた。……続けようとした。
「すっかり冷え切ってるではないか」
　ルクトの手を取ってアレックスが少しだけ眉をひそめた。
「報告は後だな」
　サッと着ていたジャケットを脱いでルクトに有無を言わせず羽織らせると、仕草で座るよう促す。
　ルクト自身は平気だと思っていたのだが、先ほどまでアレックスが着ていたジャケットはぬくもりを残していて、それを感じていると自分はとても冷えていたのだな、と思う。そして彼の心遣いが嬉しい。

　しばらくしていい匂いが漂ってきたと思ったら目の前にマグが差し出された。温かいそれはホットココア。
「ありがとう」
　お礼を言って受け取ると手からじんわりと熱が伝わってくる。
　口にすればほのかな甘みとぬくもりが体の中を駆け抜けていく。
　思わず、ルクトはホッと息を吐いた。
（あぁ、幸せだな）
　このぬくもりが？　それとも……。

　※SS担当：心音マリ