イラストSS

「ねえ、スティア。そのケーキ美味しそう！」
　瞳をきらりと輝かせるマナセに「一口食べる？」とスティアは問うた。
　嬉しそうに笑ったマナセは「いいの！？」と身を乗り出してくる。まだ幼く、伝説の魔法使いが旅したときよりも幾分か若いプーレルジールの魔法使いは妹のようにスティアによく懐いているのだ。
「うん、良いよ。はい、あーん」
「あーん！　美味しい～！」
　頬を緩めて幸せそうに笑ったマナセにスティアは頷いた。頬に手を当てて嬉しそうに笑う彼女は「こっちも食べる？」といそいそと自分の皿をスティアへと寄せる。
「え？　貰って良いの？」
「えっ、私が奪ってたら駄目じゃない？　分けっこだもの！」
「ふふ、そうだね。シェアするなら私も貰わなくっちゃだ」
　そうよと踏ん反り返った小さな魔法使いに「頂きます」と告げればその視線はフォークばかりを追いかける。
　美味しいかと問いたいのだろうか、何時聞いて良いのかとお行儀良く座って身を揺らす彼女はどこか愉快で仕方ない。
「そ、そんなに見られたら食べにくいかも」
「えっ、ごめんなさい。だってね、スティアって美味しそうに食べるんだもの。
　きっとケーキも幸せだわ！　ケーキもそう言ってると思う。　ね？　『そうだよ～』」
「今、ケーキの気持ちを代弁したの？」
「うん」
　楽しそうに笑った彼女にスティアはくすくすと笑みを漏してから「ケーキがそう言ってくれて良かった」とケーキへと告げてやった。


　*SS担当：夏あかね