イラストSS

「『輝かんばかりの、この夜に』……っと」

　全く輝いてなさそうなどんよりした薄暗さを滲ませてシャイネン・ナハトの聖句を唱えたのは、キャミソールとショーツだけを身に纏って甘味を貪る26歳の女、ウルズ・ウィムフォクシーだった。暖房をガンガン利かせた部屋で部屋着すらも着ることを放棄し、スカート丈の短い過激なサンタ衣装の女の子に乗せられるまま買ったお祝いのケーキを煙草片手に貪っていようとそれを見ているのは彼女に背もたれ代わりに使われている巨大なクマちゃんのみである。

「……あ、そっか」

　ふとカレンダーが目に入ってウルズは呟く。そう、「26歳」。彼女の誕生日は12月5日であった。彼女のいた世界でも往々にしてあったことだが、12月生まれは誕生日と祝祭(クリスマス)を混同されがちだった。プレゼントも当然１つだ。自分の誕生日自体はスルーされてしまわれがちなので、彼女自身もそれをすっかり忘れる様な大人になってしまった。

「あたしもアラサーか」

　んー……とほんの少しの間。次の瞬間、ウルズは咥えていたタバコを目の前の食べかけのケーキにぶっ刺した。ケーキには別添えでロウソクが付いていたが、そんなものは自分には勿体無い気がしてわざわざ刺す気がしなかった。

「ハッピーバースデートゥーミー……ああめんどくさ」

　これくらいでちょうどいいのだ。あたしの誕生日なんてものは。

　※SS担当：和了