イラストSS

●心の焔
　リアはまず絶句した。何だこの、毛玉の山は。
「前に依頼で助けた人からお礼にってもらったんだけど、いっぱいあるから一緒に編み物しようよ！」
「貰ってきすぎでしょ……編み物でもこんなに使い切れるわけ」
「大丈夫！　こっちに来てからはあんまりやれてなかったけど、こういうのは元の世界でお母様から色々教わってたから得意なんだ！」
「そういう問題じゃなくて……」
　ツッコミ所が多すぎるのだが、焔の獣耳が期待に動いているのがわかると無碍にもできない。溜息をひとつ吐いて、リアはあらゆる点に目を瞑ることにした。
「まったく、長い夜になりそうね……じゃあほら、アンタのお母様の話でも聞かせてよね」
「うん！」

　お揃いの部屋着で、お揃いのマフラーを編んでいく二人。
　焔の腕は本物のようで、一緒に始めたのに焔のマフラーの方が長く完成しているのがリアには少しだけ癪ではあったが。
（早く作って、出来たらリアちゃんにあげよう！）
（焔にあげるんだから、失敗しないようにしないと）
　毛糸と共に編み込まれていく想いの数だけ、マフラーの温もりは増していくことだろう。
　この、輝かんばかりの夜へ至る夕暮れに。

　※SS担当：旭吉