イラストSS

　――そこは一条 夢心地の行きつけの呉服屋。その店には夢心地以外にも、フラーゴラ・トラモント、アト・サインの姿があった。
　フラーゴラは和服を着付けてもらった自身の姿を眺め、「わぁ……！」と声を上げた。桃色と赤を基調にした愛らしい柄の着物に、フラーゴラは心を奪われる。
「夢心地さん、とっても素敵なお着物ありがとう！」
　フラーゴラは夢心地に対し、華やかな着物に相応しい笑顔で笑いかけた。そんなフラーゴラを見つめ、夢心地も満足そうに微笑みかける。
「ところで――」
　フラーゴラは隣りに並ぶアトの姿を見て、指摘せずにはいられなかった。
「どうしてアトさんも女物の着物？」
　鮮やかな赤い着物を着こなすアトは、フラーゴラに負けず劣らず華やかな姿を見せつける。そのアトは自身が男性であることも承知しているはずだが、「似合うだろ？」とフラーゴラにウインクを飛ばす。そんなアトの姿は、和服美人という賛辞がぴったりなのである。
「フラーゴラ。とっても似合っておるぞ。まるで我が娘のようじゃ……」
　アトの新たな一面に出会い、衝撃冷めやらぬままのフラーゴラだったが、夢心地の発言に透かさず反応する。
「ワタシは夢心地さんの娘じゃないよ？！」
　夢心地の発言に対し、アトは娘らしい反応を返す。
「パパン。僕、洋食が食べたいなあ。えびドリア」
　ノリノリで甘えるアトの言葉を受けて、ますます口角を上げる夢心地は言った。
「もう一人の我が娘アト！　いいぞいいぞ。ご馳走様してやろう」
　親子らしく腕を組むアトと夢心地は、そのまま聖夜の鐘が鳴り響く街へと繰り出していく。フラーゴラは、慌ててその2人の後ろについていく。
「アトさん、何でノリノリなのー？！　あとワタシたち姉妹だったの？！　アトさんと恋人になりたいからやだよーっ！」
　そんなフラーゴラの一言に対し、夢心地はからかうように言った。
「ならば、次のプレゼントは式場を用意せねばのう」
「は、はひ……？！」
「もう、パパンたら。気が早いんじゃない？」

　※SS担当者：夏雨