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武器商人の八十一鱗によるおまけイラスト
武器商人の八十一鱗によるおまけイラスト
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森の洋館にふんわりと甘い香りが漂っている。それ自体は珍しいことではない。この館の主人はお菓子作りを趣味としており、洋館のキッチンは頻繁に甘い香りに包まれるからである。だがその日は少し特別な事情があった。
「慈雨。ステンドグラスクッキーの飴部分、冷めたみたいだぜ」
「ありがとぉクウハ。ジンジャークッキーのアイシングもこれで終わりだよ」
キッチンで菓子を作っているのは森の洋館の主人であるクウハと、彼を眷属とする『武器商人』と呼ばれるモノだ。彼らは年に一度の聖なる日、シャイネンナハトに備えてお菓子を作っていた。館の住人をはじめとする彼らの『家族』に配る予定の菓子は量が多く、作るだけでも大仕事だったがクウハ達にとってそれらの作業は苦にならない。お互い、普段の菓子作りで慣れていることもあるし、何より──
「はい、クウハ。あーん」
クウハからは慈雨と呼ばれるソレが、さも当然の様にクウハの口元へ冷めたばかりのステンドグラスクッキーを運ぶ。
『我(アタシ)の猫』と柔らかな声でクウハを可愛がる主人と過ごす時間はクウハにとっても蜂蜜の様に甘い幸福の時間なのだ。
「……ん、ばっちりだ。さくさくしてて美味い」
主人の白く細い指からステンドグラスクッキーを食べさせてもらいながら、クウハはお返しにとマシュマロチョコクッキーを手に取る。くるりと指を回せばティーポットからカップへと紅茶が踊った。
こうして菓子作りの合間に始まった穏やかなティータイムは、優しく過ぎていくのだった。
※SS担当:和了