イラスト詳細
最初で最後の……
最初で最後の……
イラストSS
大きなクリスマスツリーの前で、沙耶はトールに抱き着いた。
「沙耶さんっ?」
温もりを分かち合うマフラーはやわらかに、二人を一緒に包むように巻く。
光溢れる特別な夜――赤と青の瞳に互いを映せば、まるで二人だけの世界になったよう。
片手で腰を抱くようにすれば、「捕まえた」感覚が胸に喜びの花を咲かせる。
跳ねる髪と一緒にリボンが揺れて、可愛らしい。見開かれた瞳は、拒絶の色だけは浮かべない。その安心感に、沙耶はふわりと吐息を紡いだ。
「トール……これからも、私と友達でいてくれないか。私はもう、少なくともトールの前で自分に嘘はつきたくないんだ」
トールの瞳が星のように瞬いて、当然の温度感で言葉が返る。
「沙耶さんにお願いしないといけないのは、僕の方では?」
凛とした声は、好意を伝える。沙耶が腰に手をまわしているのに対抗するみたいに、あるいは受け入れてもっと寄り添おうというように、トールの手が沙耶の背中を抱きとめる。
「僕は、沙耶さんにずっと支えられてきたように思います」
感謝。友誼。報恩。そんな感情をたたえた声は、祈るように捧げられた。
「……僕をいちばん近くにいさせてください。一緒にいましょう。他の誰よりも親しい友達だと思ってください。……誰よりも、力になります」
誓いのような言葉が神聖に響く。大切な友達と過ごす聖夜は、そんな特別な夜だった。
※SS担当者:透明空気