イラストSS

　幻想貴族の邸宅の離れの庭。
　チラホラと舞い落ちる雪が真っ白な絨毯を作りだす。

　そんな白い庭の片隅で、ひっそり佇む小さなお墓。
　こんなところにお墓があるなんて、という言葉が聞こえてきそうなところにぽつんと立っていた。

　そこへやってきたのは、天使のような翼を携えた女性――チェレンチィ。
　彼女は小さな花束を墓に添えて、小さく呟く。

「……これが、最後かもしれないから」

　この墓の下で永遠に眠るのは、大切な人。自分が手にかけた相手。『君』と呼ぶ相手。
　色々あって殺してしまった相手の墓参りをしていた。

　チェレンチィは既に大きな戦いが始まることを予感している。
　ここに来るのは初めてだが、これが最後かもしれない。
　生きて帰れたとして、こうして静かに２人きりになる時間はあるのかどうか。

　そう思うと、どうしても平和なうちに済ませたかったことがある。

「いっぱい、いっぱい、ボクの冒険譚を聞いてもらいたいんです」

　『君』に聞かせたい、チェレンチィの冒険譚。
　静かな庭の中、小さく、ひっそりと話を始めたイレギュラーズの冒険譚。

　シャイネンナハトの夜に聞かせる、『君』への子守唄が緩やかに流れていた。

　※SS担当：御影イズミ