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珠の一雫
珠の一雫
イラストSS
舞台の上に、彼女は立った。
赤いドレスで身を包み、真っ赤に輝く宝石のような素振りで。
情熱的な色は、舞台を照らす光によって一層煌めいた。
明るい輝きの下、ただ1人の観客。
白の背景を背に彼女は観客に手を差し伸べる。
人差し指の先に輝く赤い宝石が、まるで血のような輝きを見せて。
残された■としての一欠片を『貴方』に見せる。
小さな一欠片だというのに、不穏な空気が大きく広がった。
――『貴方』のために着飾った。
――『貴方』のために準備した。
――『貴方』のためにここに来た。
さあ、共に舞踏会に行きましょう?
――【私】は終わりのその時までこの舞踏会に立ち続ける。
――【私】の誘いを断るなんて、無粋な真似はしないわよね?
――【私】は何時だって【私】なんだから。
そう告げるかのように、彼女は瞳を『貴方』に向ける。
赤く輝いていた綺麗な瞳。けれどその瞳には、今はもう輝きが失せ始めていた。
白く、ゆらりとゆらめく背景。
何も見えなくなるほどの光が一層、イーリン・ジョーンズという存在を際立たせ。
彼女の人としての終わりが近づいていることを知らしめた。
※SS担当:御影イズミ