イラスト詳細
何よりも尊く、幸せな『夫婦』の時間
何よりも尊く、幸せな『夫婦』の時間
イラストSS
この世界は残酷で、どうしようもなく美しい。
そんな風に思えるようになったのは、最近のことだ。
元居た異世界では、自分は世界を構築する歯車だった。
その強大なる力を持ってして、最愛の妻を蘇らせる研究をしていた。
結果はグレイスの魂を分けた双子が完成したというもの。
世界を廻す力を持っているのに、グレイスを取り戻せなかった。
――そう思っていた。
けれど、長く願い続けた祈りは、確かに届いていたのだろう。
レイチェルにはグレイスの記憶が刻まれていたのだ。
奇しくも、彼女の意識を明確に感じることが出来たのは、この無辜なる混沌へ喚ばれてからだ。世界の歯車ではない今の自分には、転生させる能力も失われていた。
それでも、可能性を捨てきれなかった。
無辜なる混沌で転生させることが不可能でも、今存在する妻の意識を確固たるものにできれば、それは妻が自分の元へ帰ってきてくれるのと同義である。
或いは元の世界へと再び還ることが出来れば、世界の歯車となり、今度こそ最愛の妻を蘇らせることが出来るだろう。されど、先に天命が来てしまう恐れもある。
だからこそ、娘達を犠牲にする方法を選んだ。
なんとしてでも、成し得なければならない悲願だ。
そうでなければ、意味が無い。
大切なのは、グレイスただ一人なのだから。
※SS担当:もみじ