イラストSS

　シャイネンナハト。聖なる夜。
　ここに１人の祈り子が佇んでいた。

「…………」

　両手を合わせて、祈りを捧げる華蓮。
　これまでも大変な状況にあった混沌の世界。時間が経てば経つほどに、更に苛烈さを増していく。
　今一度、戦いに身を投じる者達へ、そして戦いを知らぬ者達への祈りを捧げていた。

「……皆が、無事に……」

　小さく呟く華蓮。皆というのは自分の知る人達を指しているが、わずかに何かが華蓮の脳裏を過ぎっていく。
　そのせいか、一瞬だけ嫉妬深い一面が表に出てきそうになったが、ふるふると首を横に何度か振って消し去っていく。
　今日はシャイネン、聖なる夜。悪意あるものは全て何処かへ吹き飛んでしまえと。


　聖夜にはいくつかの過ごし方がある。

　親しい者と過ごし、安寧を誓ったり。
　寒空の下で１人、これまでを振り返ったり。
　いるかもしれない、いないかもしれない、空からの赤い来訪者を待ちわびたり。

　けれど、華蓮はどれも選ばなかった。選ぶことはなかった。
　純白の翼を持つ者だからこそ、選んだ過ごし方。
　――夜通し祈りを捧げるという、宗教によっては固定された過ごし方。

　『これが私の聖夜』。
　そんな言葉がぴったりな雰囲気を醸し出していた。

　※SS担当：御影イズミ