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スティア・エイル・ヴァークライトの真坂野による3人ピンナップクリスマス2023
イラストSS
「空が綺麗ですね。星がきらめいて、平和を祝福してくれているようです。
大きな戦いがありましたから、その後に見る空はこんなにも澄んで見えるのですね。なんだか、驚きです」
嬉しそうな微笑みを浮かべたイルにリンツァトルテは「そうだな」とぎこちなく頷いた。
此処まで来るのにようやっと。そうやって背を押されてきたイルと比べて『何にも気付いて居なかった』リンツァトルテの緊張は計り知れない。
あれだけ大きく『出て』しまったのだ。イルには外聞も恥もこの際、あまりない。どちらかと言えば、この恋情の行く先が良くとも悪くとも、決着が付けられるという意味が大きいのだろう。
「この場所は」
「あ、はい。スティアに教えて貰ったのです。ヴァークライト領には綺麗なところがありますし……。
昼間に来たことはありますか? スティアの領地はどこも見所が多いんですよ。花畑もとっても綺麗です」
「あまり立ち入ったことはないが……そうだな、今度はスティアも誘って昼間に訪れようか」
リンツァトルテがぎこちなく笑えばイルは嬉しそうに笑った。大親友(スティア)はまさかこの場面で自分の話が為れているなどとは思うまい。
本当は『イルちゃんとリンツさんが良い雰囲気で二人がハッピーエンドになる!』なんて場面を期待していたはずなのだ。
この奥手な男と、自分の出自故に知って貰えただけで嬉しいなんて思ってしまう女は、歩みものろのろである。
スティアの相棒ポジションに堂々と居座ろうとしている元聖女に言わせれば「じれったすぎて欠伸が出るわよね」との事だ。
「「あの」」
無言の時間に耐えかねてからつい口を開いた。
「あ」
「先輩から」
「いや……」
それから、被してしまったことに戸惑って言葉が出ない。
リンツァトルテから見れば、イルは特別な存在だったことには変わりが無かった。
何れだけ不正義と言われようとも彼女は己の傍に居たのだ。それはずっと長い間変わらなかった。
――先輩。
呼ぶ声が心地良かったが、それでは少し物足りなかったのはいつからだろう。それは、つまり。
「イル」
「はい」
「先輩と呼ぶのを止めないか?」
「え? えーと」
「リンツァトルテでいい」
「リッ、リリリリリ――――!?」
驚いた顔をしたイルにリンツァトルテは小さく笑った。
君が慣れて名を呼んでくれるのは何時のことだろう。それを楽しめている時点で答えはでているようなものなのだ。
*SS担当:夏あかね