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傍にいるよ
傍にいるよ
イラストSS
さくり、さくり。雪を踏み締めると足が沈む。音は雪に吸われとても静かだ。星がまたたき、とても近い。空気が澄んでいた。山頂はすっかり雪におおわれている。
雪も深い鉄帝国。白いコートを羽織り、グリーフはそこにいた。
鉄帝での動乱を思い返す。軍部非主流派……現独立島アーカーシュに在籍したこと。そして石室で彼女と会話したこと。冠位七罪と対峙したこと。彼女は三本目の矢になったこと。彼女の欠片を見つけた時に涙したこと。
ぎゅうと胸元のペンダントを握りしめる。きらりと輝くルビーの欠片。肌身離さず持っている大切なもの。
自分は彼女と共にあると、守護者であると、誓い認められたのに。
胸がくしゃくしゃになる。でも握りしめたペンダントは温かくて。独立島で過ごした日々を思い起こさせる。太陽に近い場所で、守ると決めた日も昨日のことのようだ。冷たい風が吹き、はっと夢想から引き戻される。
「……ラトラナジュ」
──はい。ここにいますよぉ
「え?」
ルビーの大精霊がそう返事をしたように思えて振り返る。当然そこにはいない。いないのだが、
側にいる。そんな気がして。
※SS担当:7号