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世界で一番ひねりのない幸福
世界で一番ひねりのない幸福
イラストSS
シャイネンナハト。年に一度の聖なる夜。
今年の空には光り輝く、満ちる月。
望月凛太郎の目前には、朔・ニーティアがいた。
彼にとって大切な、大切な存在。
凛太郎は十二本のバラの花束を抱え、彼女に今、想いを伝えようとしていた。
バラには色だけでなく、贈る本数にも意味があると言われている。
十二本の場合は「感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠」の意味が一本一本に込められており、それをパートナーに誓うという意味で使われる。
高まる鼓動、体温。
トクン、トクン、と強く脈打たれるのがわかる。
身体も微かだが、震えている。
この雪降る寒さで、というのもあるが、もちろん緊張での方が強い。
唇をきゅっと引き締める。
そして大きく深呼吸をして、気持ちごと整える。
そして、想いを、言葉に変える。
「朔・ニーティアさん。あなたの事が好きです。大好きです。ずっと俺の隣にいてください、ずっと大切にします」
彼女は驚いたような顔をした。
「……もっちー? それは、本気なのかい?」
今の呼び方は彼女にとっての照れ隠し、なのかもしれない。
しかし凛太郎はまっすぐ真剣に、言葉を紡ぐ。
「俺は本気だよ、ずっと」
それを聞いた朔は、少し間を置いた後に嬉しそうに笑う。
「喜んで! ──り、凛太郎、くん」
言って、朔は凛太郎に飛びつくように抱きついた。
これは、世界で一番ひねりのない幸福だ。
まっすぐで、純粋で、曇りのない幸福。
※SS担当:悠空(yuku)