イラストSS

●惨（事を）美（化）してる場合じゃねー！！
　歯車大聖堂は昼からシャイネンナハトの準備に追われていた。
　厳かな聖夜には清められた大聖堂で乳香を焚き、敬虔な信徒を迎え入れ、祈りの儀式を執り行うのである。
　今も、楊枝 茄子子とヴァレーリヤ＝ダニーロヴナ＝マヤコフスカヤは準備した乳香を焚き始め―――
「何だか、煙たくありませんこと……？」
「ちょっと量が多かったかな。減らしてみ――」
　手を出す直前、乳香を盛った器がごうと燃え上がり、あっという間に部屋へと燃え移ってしまう。
「あああ！　消火、消火しないと！！」
「ええい、このっ！　消えませんわっ！」
　ヴァレーリヤが咄嗟に手近にあった箒で火を叩き消そうとするが収まらない。もうそういうレベルでは無い。
「茄子子、あれ！　あそこに置いてある樽を持ってきて下さいまし！　確かあの中に水が！！」
「これだね！　よし、投げるよ！」
　大樽の蓋をぶち破り、少女の体格ではおよそ投げられそうにないそれをぶん投げる茄子子。これが火事場の馬鹿力。
　しかし。
「……待ってこれお酒じゃない！？　やばい燃え広がる！！」

　あああああ――――！！

　夜までには何とか鎮火したものの、こっぴどく叱られた二人がいたとか、いないとか。

　※SS担当者：旭吉