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紫電・弍式・アレンツァーの傾 千悠によるおまけイラスト
イラストSS
「にっひっひ、輝かんばかりのこの夜に、だぜ!」
「ああ。善い夜が来たな」
紫電の手を引いて秋奈は走る。待ち合わせ場所に見えたのは何時も通りの様子で光の海を眺める彼女だった。
揺らぐ漆黒のドレスに鮮やかな紅色の眸が物音に気付いたように向けられる。
「いえーい!」
飛び付かん勢いで秋奈はリーゼロッテの元へとやってきた。
「ちょ――、何をしていますの」
「えー? 久しぶりじゃーん。何何、元気してた? 風邪引いてない?」
「ええ」
リーゼロッテはぎゅうと抱き締める秋奈にされるが儘だった。それを拒絶しなかったのは彼女が余っ程幸せそうだったからだ。
此れまでの事を思えば、少し位は許してやろうと言うことか。
「はは、秋奈が寒いんだろ」
「モチ。紫電ちんひんやりしてるしさあ」
拗ねたような秋奈に紫電がくすりと笑った。この寒空の下を歩いてきたのだ。
二人のサンタクロースの楽しげな様子を目にしてからリーゼロッテは「シャイネンナハトの精霊にでもなったつもりですこと?」と問うた。
白い髭を蓄えてきた紫電は「それだけじゃないぜ」と笑う。
「改めて――」
「おかえり、リーゼロッテ」
「おかえりだぜぃ、ぴすぴす」
二人を前にしてリーゼロッテは目を見開いた。
二人のサンタクロースは楽しげにリーゼロッテの手を引いた。
「誕生日の日はアーベントロートの動乱で、それどころじゃなかったからな」
「私ちゃんたちからの贈りもの!」
「ハッピーバースデー!」「メリーシャイネン!」
――アーベントロートの華は、何時だって享楽的だ。
時に人の命を奪う事にも頓着せず、悪辣である事を求められてきた。
「「リーゼロッテ!」」
あれだけの内乱があったから? だからといって友達の誕生日を祝わないで良いということはない!
サプライズだと笑う秋奈と紫電を前にしてリーゼロッテはくすりと笑った。
「何を下さいましたの?」
「え、言ったら面白くないじゃん」
「そうだ。帰ってからのお楽しみ……ってのはどうだろう?」
顔を見合わせて笑った二人にリーゼロッテは肩を竦めてから「それも悪くはありませんわね」と囁いた。
*SS担当:夏あかね