イラストSS

「ハッピーシャイネンナハト！　さ、あなたもプレゼントをどうぞ！」
　勇者とは。人に笑顔と希望を届けることも立派な仕事のひとつなのではないか、とフォルトゥナリアは思っている。
　これといった理想があるわけではないけれど、でも誰かが泣いている世界は嫌だから。
　そりに乗って、トナカイを指揮してプレゼントを届けに走る。背中には沢山の子供たちが笑顔になれるようなプレゼントを乗せて。
「ようし、次の子のところにいこう！　トナカイさん、お願い」
　きらきら輝く街明かりに照らされた人々の笑顔をみると、フォルトゥナリアの胸の奥もあたたかくなるような気がして。
　だからより一層、笑顔が花開くようにそりを飛ばす。プレゼントを待つ子供たちがいるのだからのんびりなんてしていられない。
　希望を。笑顔を。そうやって、誰かの幸せを祈る心は、魔王討伐を目指していたかつての世界でも、様々な脅威に立ち向かう今の世界でも変わっては居ない。
「どうして泣いてるの？　でももう大丈夫。ほら、プレゼントだよ」
　傲慢かもしれない。それでも、誰かを幸せにできるなら。
　目線を合わせて微笑んだフォルトゥナリア。泣いていた子供の目からもみるみる涙は消えていく。
「ふふ、よかった。素敵な夜になりますように！」

　※SS担当者：染