イラストSS

　空には雪。
　大地に土。
　降り注ぐ雪は大地を白く染め上げ、
　小さな苗木に優しくつもる。
　ふと、それをやさしく払って見せれば、
　その気に宿る、確かな生命の温かさを感じられるような気がした。
　深緑での戦いの後に、炎の嘆きは深き眠りについた。
　今は、この木々に眠る彼の熱を、この小さな苗木に感じるような、そんな気持ち。
　戦いの果てに、彼に託された責務が、熱を帯びて胸に燃えるような感覚。
　きっと彼の願いを、想いを、自分たちは背負って生きていくのだろう。そんな風に思う。
　「輝かんばかりの、この夜に。
　シェームさん……こっちは冬になりました。
　まだまだ春も平和も遠い……それでも……。
　自分達は、貫き続けるであります」
　ムサシが、敬礼のポーズとともに、そう言葉を紡いだ。
　受け継いだものを、心の奥に燃えるものを。
　人を守り、心を守り、信念を燃やし、貫き続けることを――。
　誓う。願う。想う。
「輝かんばかりの、この夜に。
　シェームさん、届いていますか？
　……私たち、きっと絶対頑張りますから」
　空に、大地に、木々に、命に――。
　誓い、祈る。
　今は眠る、あの人に。
　今は答えない、あの人に。
　彼ならなんというだろうか。
　笑うだろうか。喜ぶだろうか。
　いいや、意外と――こういうかもしれない。
「なんじゃ、そんなことはいちいち報告されなくとも信じとるわ。
　それより、風邪なんぞひいて倒れんようにな」
　と。
　熱を、心を、遺志を、願いを、託された。
　進もう、雪の中も、冬の中も、春を目指して。
　もしも、またあなたが目覚めたら、今度は春の陽だまりの中で、笑ってもらえるように。
　そうするだけの、決意を、意志を、覚悟を、自分たちはもっているのだから。
「頑張りましょう」
　と、ムサシは言った。
「一緒に……」
　それは、まだ、仲間として。友として。同じ志を抱く、同志として。
「はい」
　ユーフォニーも、この時はそのように、うなづく。
「頑張りましょう、一緒に」
　二人はもう一度、空を見上げる。
　雪は、二人の熱を、意志の熱さを冷ますのではなく、祝福するように降り注いでいた。
　そして、春に向けて、また踏み出すのだ――。