イラスト詳細
Near and dear.
Near and dear.
イラストSS
「やあやあ、クロバっ子。元気にしていたかな?」
小さな礼拝堂に現れたクロバへ向けて、ヴィヴィが両腕を広げる。
「見ての通りだよって、全く。しょうがないな」
「察しが良くなったのは僥倖かな。それにこれはこれは、中々に悪くない」
一つハグしてやると、ヴィヴィはにやにやと笑った。
少女のような大精霊を彩る色彩は、以前とずいぶん違っていたが。
「どうせ相変わらず、無茶ばかりしているんだろうがね。それでも会いに来てくれたのは嬉しいよ」
クセの強い物言いだが、ヴィヴィの本心であることには違いない。今ならそれが分かる。
「それでは散歩にでも行こうか、エスコートは頼んだよ」
「どうぞお任せあれ」
向かったのは、大霊樹ファルカウの根元だ。
見上げるどころかそびえ立つ山のようで、実際に都市でもある。
ヴィヴィは二度とここから出ることは出来ない。
そんな境界線に二人は腰を下ろした。
「ここでいいのかい?」
「ここがいいのだとも」
ヴィヴィはそう応えて、草の上に座り込む。
それからクロバを見上げると、「来たまえ」と膝を叩いた。
「わかりましたよ、と」
クロバは二度ほど人差し指で頭をかき、観念した。
頬に感じられる温かな体温は、あるいは精霊力による仮初かもしれないが。
けれど確かな本物としての実感がある。
――どこにも行くなよ。クロバっ子。
その言葉は、ただ彼をこの場所へつなぎ止めておくという意味ではなかったろう。
※SS担当者:pipi