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恋屍・愛無のぺいゆによる2人ピンナップクリスマス2022
恋屍・愛無のぺいゆによる2人ピンナップクリスマス2022
イラストSS
タタン、タタタン。
去夢鉄道に揺られながら水夜子は小さく欠伸を噛み殺す。
「疲れたかい?」
「ええ。すっかり遊んでしまって夜が来ましたから。けれど、ケーキだけは死守しましょうね」
ケーキを食べてこそのクリスマスだと水夜子は自信満々に言った。そんな彼女の横顔を眺めて「確かに、クリスマスらしい時間を過ごすのも必要だ」と愛無は頷く。
二人並んだ電車の中。ボックスシートに座って水夜子は膝の上のケーキを眺めて居る。
彼女曰く、気に入っているカフェのケーキなのだそうだ。愛無が「なら、水夜子君が選んでくれ」と注文を任せれば、彼女は意気揚々と二つケーキを注文したのだ。
帰ったらコーヒーと一緒に食べるのだと意気込む水夜子の嬉しそうな横顔を見ているだけで愛無は嬉しくもなる。
この穏やかな時間が日常であり、非日常だ。本来は『座標』という存在は戦いに明け暮れ、滅びと相対しなくてはならないのだ。
だが、この再現性東京は微睡みの淵にある。滅びも、現実も、何もかもを忘れたようなそんな揺り籠で穏やかな日々を過ごしていられるのだから。
「はーあ」
「どうかしたのか」
「眠たいなあって。肩を貸して頂いても?」
「……勿論」
肩により掛かった重みと温もりを感じながら愛無は目を伏せる。
もう暫くはこの微温湯に浸かっていたいのだ。
*SS担当:夏あかね