イラスト詳細
たてはさんいらっしゃい!
たてはさんいらっしゃい!
イラストSS
「いらっしゃいませ……!」
肉屋のゴラで店番をしていたフラーゴラはやってきた客人の顔を見てからぱちくりと瞬いた。
「おやまあ。小娘のお店やったの」
紫乃宮流師範代。居合の名手たるその人は美しい射干玉の髪を揺らがせてから僅かに目を瞠った。
小娘と呼ばれたフラーゴラは「わ、わ」と何度も繰返す。
「たてはさんだあ……!」
「なんやの、来たら可笑しい?」
「ううん……! もしかして、梅泉さんに……?」
そわそわと身を揺らがせるフラーゴラにたてははふんと鼻を鳴らした。僅かに朱の差した頬に乙女の考えが透けている。
「そ、そりゃあ、折角のシャイネンナハトやし……旦那はんにええもの食べてもらお思って……」
「ふふ、そうなんだあ」
「な、何笑ってんの」
少し拗ねた様子にも見えたたてはが可愛らしくてフラーゴラはくすりと笑みを浮かべた。
「じゃあこっちのAゴランク(A5ランク)のお肉ですき焼きとかどうかなあ……?」
「……ええやん」
「きっと満足してくれるよ」
「……せやね。美味しいお肉用意してたら旦那はんも帰って――」
「……?」
帰って――?
フラーゴラがぱちくりと瞬けばたてはは「何にもあれへん!」と首を振った。
どうやら彼女のシャイネンナハトは梅泉の居場所探しから始まるようだ。
*SS担当:夏あかね