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ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤのサナセオキレによるおまけイラスト
イラストSS
●戦火に咲く笑顔
「これは……?」
鉄帝内戦が荒々しくなっている最中。その内戦の戦火がまだ届いていない街でラウラとイヴァンの二人はひとときの休息を得ていた。
それは一重に今日という日がシャイネン・ナハトだからである。年に一度、世界が平和である事が約束されているはずの輝かんばかりの二日間のうちその一日なのだ。
戦いを休んだ生きとし生ける者達は身体を休め心を休め、時には仲間と馬鹿騒ぎをして、そうして各々思い思いの安寧のひとときを過ごすのがこの無辜なる混沌の毎年末のルーティンのようなものになっていた。
──だから。
そんな休息中とは言え内戦は内戦。そんな戦いの真っ只中で、嗜好品を買うような余裕などあろうはずもない……のだが。
ラウラが不思議な気持ちで見つめる先にあるのは、紛れもなくリボンでラッピングされているプレゼントだ。
その様子を見て、イヴァンは穏やかに笑った。
「ラウラが前に欲しそうにしていたのを思い出したんだ。こんな時代だが、だからこそ……と思ってな。受け取ってもらえるか?」
「ほ、本当に……?」
ラウラは恐る恐るプレゼントを受け取る。確かに以前ショーウィンドウから見えたところへ目線を向けた事のある物だった。
物資の不足する中だと言うのに、手を尽くして手に入れてくれたのだと理解した瞬間、ラウラはプレゼントを抱いて嬉しそうに笑った。
「ありがとう。手に入れるの大変だったでしょう?」
「まぁ……そこそこに、な。だがラウラの笑顔で苦労した甲斐があったと思っている」
こんなにも花が咲いたように嬉しそうに笑ってくれるのならば、イヴァンとしても彼女のその輝かしい笑顔につられて笑顔になれてしまうというものだ。
「本当にありがとう……大切にするわ」
輝かんばかりのこの夜に。
戦火渦巻く鉄の空から降り注ぐ雪だけが二人に降り注ぐ。
きっとこれから激カしていく内戦の中、お互いどのような結末が待っていたとしても今日という日が二人にとって大切な思い出たる日になった事には違いない。
例年以上に降る雪がこの国の民を苦しめる事になっていたとしても、今日だけは輝かんばかりの思い出の一部として輝くばかりだ。
例え例え。
例え、たらればのような未来を迎えても、このプレゼントの柔らかさも、降り注ぐ雪の冷たさも、ラウラの花のような笑顔も、イヴァンのその温かい優しさも全部が全部本物であった事には違いない。
──例え、次のシャイネン・ナハトが消え失せてしまっても。
※SS担当者:月熾