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イラスト詳細

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤの鳴蚊嶋五連による関係者2人+PCピンナップクリスマス2022

作者 鳴蚊嶋五連
人物 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ
イラスト種別 関係者2人+PCピンナップクリスマス2022(サイズアップ)
納品日 2022年12月24日

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イラストSS

 雪の降る、それは教会でのことだった。
 何本もならぶ蝋燭の明かりが、暮れかけている窓からの明かりと合わさりさほど広くはない室内を照らしている。
 不意に開いた扉からは雪風が吹き込み、一人のシルエットを室内へとうつしこんだ。
「大司教殿」
 僧服にスキンヘッド。袖からおろした手はロボットアームのような形状をしている。
 だがそのシルエットをみるまでもなく、机にむかっていた大司教ヴァルフォロメイは声で誰何を察した。
「ダニイールか。よく来たな。どうだい、そっちは」
 机から立ち上がり、振り返るヴァルフォロメイの表情は穏やかだ。
 灰色の髪と瞳は雪にかすむようで、しかし190センチほどはるその体躯は大きく立ち上がると老体に隠されたその迫力を思い出す。
 ダニイールは扉を後ろ手に閉め、己の肩にかかった雪を払い落とすと室内へと入った。
「革命派について、お話が」
 迫力というのならダニイールとて負けていない。こわもての顔にスキンヘッド。耳はやや丸く、彼がただの政治家ではないことを思わせる。
 クラースナヤ・ズヴェズダー帝政派。政治の側から弱者の救済をなさんとする派閥であり、ギアバジリカの騒動がおきた後でも彼のロビー活動によって発言力の消滅は免れていた。とはいえ、政治的な立場が後退したことはやはり否めないのだが。
 そんな彼がヴァルフォロメイのもとを訪れて口にするのは、決まって革命派の動きについてだ。
 ヴァルフォロメイもそれを分かっているのだろう。『またか』という反応を示しはしたものの、彼に対して呆れや嫌気を見せるようなことはない。それが真剣な議論であると、ヴァルフォロメイもまた分かっているのだ。
「また占領施設を増やしたそうですな。我々にとって勢力の拡大は危険だと再三申し上げたはずですぞ」
「そうは言うがなあ。来る者拒まずで難民を受け入れまくっちまってる現状だ。満足に飯を配りまくることもできん。勢力の拡大は必要不可欠だろう」
「それがいかんのです!」
 感情的になったダニイールが机を叩く。
「このまま勢力を拡大し続けては、新皇帝派を駆逐した後どうなるとお思いか!他の勢力に警戒され駆逐されてしまっては、全てが元の木阿弥ですぞ!」
「言いてえことは分かる。だが、これは俺達にとって最大の好機だ。
 今のうちに勢力を拡大して、魔種を倒した後の発言権を確保しておけば、理想の実現に大きな一歩を踏み出せる。
 より多くを救えるようになる。力を持ち過ぎちまった時は、その分を譲りゃいいだけの話だろ?」

 議論はその日も白熱し、最後には納得しかねるという顔をしてダニイールが帰って行く。これもまた、何度もみた光景だ。
 数年前ならば、彼の相手はアナスタシアだった。だが彼女の穴を埋められる者は……。
「失って初めて気付く……か」
 ヴァルフォロメイは瞑った目頭を押さえ、息をついた。冷えた部屋に、彼の息が白くかすむ。

 ※SS担当:黒筆墨汁

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