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ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤのみずうみによる関係者1人+PCピンナップクリスマス2022
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「そうして修行を続けていたある日の夜、突如として空が紅に輝く星で彩られたのです。聖ボリスが驚き天を仰ぐと、主が啓示を下されました。この地に教会を建て、可能な限り多くの貧者を救うようにと。こうして、クラースナヤ・ズヴェズダーは開かれたのです」
聖書を開き、その内容を読みあげる声がする。
床に座った子供たちは、そんな様子を眺め自らの膝を抱いていた。
子供たちの身なりはそれほど綺麗なものではない。鉄帝に起きた冠位魔種による新皇帝即位という大事件から始まった動乱によって避難してきた子供たちであるためだ。
そんな子供たちにとって、やはり娯楽は少ないのだろう。読み聞かせというだけでもじっと聞き入り、中には微笑む子の姿もあった。
とはいえそればかりではないようで。
「あらあら」
眠そうに目を擦る子供の頭を撫で、ヴァレーリヤが優しく微笑みかける。
「ふふ、今日はもう疲れてしまいましたのね。お部屋に戻って休んでも良いんですのよ?」
「うーん……」
曖昧に頷きつつ、ヴァレーリヤに寄りかかって目を瞑る子供。
そのまま眠りに入ろうとしたようで、ヴァレーリヤは困った様子でアミナを見やった。
アミナもまた、くすりと笑って読み聞かせを続ける。
その声は優しく、穏やかで、そして暖かだ。
一つ一つ、一言一言に想いを乗せて。どうか、この子達が優しく健やかに育ちますようにと。
「皆さん、おやすみなさい」
迎えに来た親たちが子供の手を引いて去って行くのを、教会の外で手を振って見送る。
途中で眠ってしまった子はそのまま負ぶさられ、すやすやと安堵したように眠っているようだ。
ヴァレーリヤとアミナはちらりと顔を見合わせ、そして微笑み合った。
「今年の朗読会は、沢山来てくれましたね。ヴァリューシャ先輩」
「そうですわねえ」
といいつつ、ヴァレーリヤは思案顔だ。
何か言いたいのだろうかと言葉を待つアミナに、ヴァレーリヤがぽんと手を打った。
「そうだ。シャイネンナハトの夜に絵本の読み聞かせをしましょう。私達だけじゃなくて、他の方も読んで。聖書もいっそ絵本みたいにして――」
そう語るヴァレーリヤは楽しげだ。アミナもうんうんと頷き、満足そうにしている。
二人は教会の中へ戻りながら、肩にかかった雪を払った。
「先輩。私、嬉しいんです。今日も子供たちが集まってくれて。今までやってきたことが無駄じゃなかったって、思えて……」
うつむいてそう呟くアミナに、ヴァレーリヤはにっこりと笑いかける。
「ええ。あなたのやってきたことは決して無駄なんかじゃありませんわ。次はもっと賑やかにしましょうね」
「……はい!」
雪は尚も降り積もる。
声を、熱を、どこかへ隠してしまうかのように。
※SS担当:黒筆墨汁