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グリーフ・ロスの鹿野慈によるシングルピンナップクリスマス2022
グリーフ・ロスの鹿野慈によるシングルピンナップクリスマス2022
イラストSS
しんしんと雪が降る聖夜。
石造りの遺跡へ赴いたグリーフはとある部屋へ向かっていた。
ギィと軋む音を立てながら、ドアを開く。椅子が一脚だけある寂しい部屋だった。
壁に取りつけられた燭台に、グリーフは火を灯した。
「今日は争いの無い、特別な。奇跡の一日なんですって」
明るくなった室内でグリーフは『その人』の隣に腰を下ろした。
身体を冷やさないように、ブランケットを肩にかけて『その人』に微笑み、語り掛ける。
『その人』はグリーフと違い、人の形を模していない。
言葉を発することも、一人で歩くことも無い。
兵器として生まれた彼、或いは彼女を見つけた時からグリーフは放っておくことが出来なかった。今でこそ、グリーフと名前で呼ばれる彼女だが、元は機械人形3726号という番号しか与えられない存在だった。自分の存在価値を、意義を探して考えて各地を巡った。
「そして、あなたと、出会った」
以前にも口にした言葉である。あの日から、隣に居る『この人』を護ろうと誓った。
『矢』が答える、その日まで。
「――輝かんばかりの、この夜に」
二人でいれば、屹度寂しくないから。
聖夜の祝福が、隣に居る『あなた』にもありますように。