イラストSS

「あんまりですわ～～～～～～～～～～！」
　涙を流す仮面のクソザコ美少女、その名はビューティフル・ビューティー。
　サンタクロース風の衣装を身に纏い、今にも子供たちにプレゼントを配って回りそうな様子なのになぜ泣くのかという問いには……腰にしっかりと巻き付けられた縄が答えを示していた。
　その後ろにはいかにも重そうなソリ。プレゼントボックスを山のように詰んだそれには、馴鹿のコスプレをした郷田 貴道が乗っていた。
　うんわかるよ言いたいこと。サンタとトナカイの立ち位置逆だよねって。たぶんみんな思ってる。横で同じように縄に繋がれてるコルネリア＝フライフォーゲルも思ってる。
「なんでアタシまでこんな目にあってんのよぉ！？　こういうのはアンタたちの『やくめ』でしょお！？」
　困惑と怒り、そしてひとつまみのかなしみ。
　コルネリアはキッとビューティーを、そしてこちらをにらみ返すヴァレーリヤ＝ダニーロヴナ＝マヤコフスカヤを睨んだ。
「誰が！？　ええいビューティー、泣いている暇があったら頑張って引きなさい！　この様子だと、配り終わるまでこのままでしてよ！」
　スカートタイプのサンタクロース風コスチュームを纏ったヴァレーリヤはその体型も相まってよく似合っていたが、やってることが石器時代のピラミッド建設奴隷なので漂うのは愛くるしさより哀愁であった。
　コルネリアもコルネリアで、オトナなドレスを纏い今にもシャイネンパーティーにでも出かけそうな装いなのに隣の二人と一緒に並べられている始末である。
「どうした三人とも！　脚が止まってるぞ！」
　ピシャーンと鞭を鳴らす郷田。いよいよもってピラミッド建設奴隷である。
「子供たちにプレゼントを配って回る尊いチャリティーだぞ。嬉しいだろ」
「うれしかないわ！」
　クワッと振り返るコルネリアに、郷田は鞭をふりあげ一言。
「命がけでチャリティーしろ」
「初めて聞いたわそんな単語の組み合わせェ！」

　しゃんしゃんしゃん、と輝かんばかりの夜に鈴の音が鳴る。
　『郷田ズブートキャンプ・シャイネン・チャリティー・キャンペーン』と書かれた旗がたなびき、美女たちの泣き声（？）がこだまする。
　子供たちの笑顔のために。たぶん。

　※SS担当：黒筆墨汁