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独りの聖夜
独りの聖夜
イラストSS
分かってはいるが分かりたくない事はある。
ブレンダは家にいた。テーブルの上には蝋燭立てたケーキもあろうか。
だが、そのケーキに手はついていない。
……ブレンダはソファに座り、膝を抱いて俯いているだけ、だ。
ブレンダ。シャイネンナハトの日なんだけど――
(あんなことを言っていたのにな)
ブレンダは想起する。ある男の姿を。
……あぁ所詮は期間限定の熱だったのだろうな、と。
彼が別の誰かを選ぶとしても止めることも口を出すこともできない。
だから独りで今夜は過ごす。
……なんてことはないと、想いたいものだけど。
でも。
(独りで過ごす聖なる夜は)
とてもかなしくさびしいもの。
胸が痛む。苦しい、という感情なのだろうか。
分からない。分かりたくない想いが脳裏をよぎりて――
「……くぅ~ん」
「……慰めてくれるのか? インベル」
お前は、優しいな。
傍に寄り添ってくれたインベルの首を撫ぜよう。
もしかしたらまだ、来てくれるかもしれないから。
希望を抱いて時計を見よう。
――あぁ。まだ、もう少しだけ。
シャインナハトの時は残っているから。
だから、もう少しだけ。
胸の奥底からこみあげてくるものに、蓋をしておこう……